妄想小説
尼僧院物語
十七
その夜も夕食を給仕する為にマリアは男の居る離れの部屋を訪ねる。胸の周りをきつく縛っている荒縄はいつもの事だったが、この夜から下半身には貞操帯がまかれている。上から尼僧衣を纏ってしまえば、一見それとはしれない筈だった。
「涼馬さま、夕食をお持ち致しました。」
「やあ、マリアさん。ありがとう。」
マリアがベッドの脇のテーブルに食事と葡萄酒の入った盃を置く。
「僧院長様がこの葡萄酒が身体の回復に効くので、是非呑んでおくようにとのことです。」
「いつもありがとう、マリアさん。」
「それでは私はこれで失礼します。」
そのまま、ベッドの脇から去ろうとするマリアの手を涼馬がいきなり掴んだ。
「何をなさるのです。いけません。」
ピシリと言い放つと荒々しく涼馬の手を払いのけたマリアだった。あまりの激しさに涼馬のほうがびっくりする。
「どうしたんだ、マリアさん。」
「な、何でもありませんわ。」
「そうかな? マリアさん。前から訊こうと思っていたのだけど、その尼僧服の下に何か着けていない?」
突然の言葉にマリアはビクッとする。
「何を言うのです。」
「隠しているよね。」
「何も隠してはいません。失礼します。」
慌てて男の部屋を出るマリアだったが、てっきり貞操帯の事を気づかれたのだと思い込んでいた。しかし涼馬はマリアの腰に触れた時に感じた縄のことを聞いていたのだった。
(どうしてこのことに気づかれてしまったのだろう・・・。触れられたのは手だけだった筈なのに。)
マリアは貞操帯の事を知られてしまったと思い込んで恥ずかしさに足早に自分の部屋に戻るのだった。
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