妄想小説
尼僧院物語
三十八
秘密の通路からマリア像のある祠に出た涼馬は振り返って修道院の方角に火の手があがっているのを見つける。
「マリア、後ろを決して振向いてはいけないよ。」
「僧院長様にもそう言われたわ。何故なの?」
「理由は聞かないで僕の手をしっかり握って一緒に走るんだ。いいね。」
「ええ、お願いよ。涼馬さん、私を守ってね。」
「ああ。行くよ、マリア。」
マリアは自分の背後で火の手に包まれていく修道院を振り返ってみる事もなく、街のほうへ涼馬に手を繋がれて走っていくのだった。
完
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