妄想小説
尼僧院物語
十六
「僧院長様、マリアをお連れしました。」
「おや、マリアかい。どうしたの、その格好は・・・?」
「ほら、マリア。ちゃんと自分で言うのだよ。」
「は、はいっ。ナタリー様。あの・・・、僧院長様。マリアはナタリー様に言われて、男の方のお世話をするのに、これを嵌めて頂きました。」
「それが何の為のものか、わかっておるのか?」
「いえ、僧院長様。でも、ナタリー様のお言いつけですので。これならば、あの男の方のお世話を続けてもよろしいでしょうか。」
「何の為のものか知らないなんて・・・。マリアはずっとこの修道院で育ったので、世間の事に疎いのだね。」
「そうですわね、僧院長様。男の方のあそこがどのように変化するのかもしらないのかもしれませんね。」
「おや、ナタリーったら。案外、知っているのかもしれなくってよ。」
僧院長はマリアとアレクセイ神父が懺悔室で二人で居る時、すぐ隣に居たのだった。その事を思い出していたのだが、ナタリーには何のことか判らない。」
「マリアよ。それがあるからと言って、安心とは限らないのだよ。男の前に出る時は、尼僧服に身を包んで、それを嵌められている事は決して気づかれてはならないのだよ。男というものは出来ないと判ると余計にしたくなるものなのだから。」
「したくなる・・・? 何をでしょうか?」
「まあ、マリアったら。しらじらしい。」
「まあまあ、ナタリー。本当に知らないのだろうよ。いいですか、マリア。男の方に絶対に身体に触れられないように気を付けなさい。あなたからも触れてはなりませんよ。」
「わ、わかりました。僧院長様。」
「ならば行きなさい。」
「失礼いたします。」
マリアは一礼して僧院長室を後にする。
「僧院長様。ちょっとお話が。」
「何だね、ナタリー修道長?」
「実は、マリアがこっそり自慰をしているのを見たものが居るのです。」
「何ですと・・・。」
「マリアは男に接吻されてからというもの、あの男のことが頭から離れないようです。」
「接吻をされたというのですか?」
「男を知らなくても、自然の摂理で男と女がする事を知ってしまうということはあるのかもしれません。」
「しかし、自慰をしているのをあなたも見たのですか?」
「いえ、私はそれは見ておりません。ですので今夜確かめたいと思うのです。私にそれをさせて頂けませんか?」
「・・・・。今夜? どうするのです?」
「僧院長様、ちょっとお耳を・・・。」
「ふむふむ・・・。そうですか。ではあなたにお任せします。」
「畏まりました、僧院長様。失礼いたします。」
ナタリーが見たのは男の方が自慰する姿だった。マリアが自慰をしているのを見た者が居るという話はナタリーの創作なのだった。しかし、男が居る離れにある秘密の覗き穴からこっそり男の様子を窺っていて、思いついたマリアを陥れる罠を思いついたのだった。
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