鎖付き地下牢

妄想小説

尼僧院物語



 三十一

 「へえ、こんなになっているんだ。確かにこれじゃあ、本物の地下牢だな。おい、涼馬。お前が繋がれていたっていう足枷ってどこにあるんだい?」
 「ああ、それならこれだよ。こいつで・・・。あれ、琢己? どこ行った?」
 涼馬は琢己がすぐ傍に居ないのに気づいて不審に思う。その時ガシャンと重たい木の扉が閉まるのが見えたのだった。
 「おい、何の冗談だよ。俺を閉じ込めてどうする?」
 扉の向こうでするすると閂が掛けられている音がして涼馬は慌てる。
 「おい、俺を閉じ込める気かよ。」
 「悪く思うなよ。ちゃんと迎えに来るからさ。マリアの処女を頂いたらな。じゃ、ちょっとここでおとなしく待ってろ。」
 「おい、琢己。何ふざけてんだ。開けろ。開けろってば。」
 しかし涼馬には琢己が階段を昇っていく足音が虚しく小さくなっていくのしか聞こえなかったのだった。

 涼馬を教誨室に閉じ込めてしまうと、琢己は教えられていたマリアの部屋へ直行する。
 (二階の廊下を突っ切った東の端の部屋だと言っていたな。)
 琢己はその一番東の端にある部屋の前までやってきた。
 トントン。
 「はあい。ナタリー様でしょうか。只今参ります。」

tbc
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