ヤコブ白シャツ

妄想小説

女子修道院の隠された秘密



 二十九

 「え、この子が・・・?」
 「案ずることはありません、マリア。この子は一見外人の子に見えるかもしれませんが、日本人です。白ロシア人と日本人の混血なのですが、生まれた時から日本にしか居ないので日本語しか喋れません。ヤコブよ。こちらがお前の教育担当となるマリアです。」
 ヤコブと呼ばれた少年は挨拶するでもなく、ペコリとマリアにお辞儀をしただけだった。
 (こんな少年だったのだわ。こんな幼い子ならばあんなものは必要ないのに・・・。)
 マリアはヤコブに勉強を教える為の条件として装着することを命じられた器具が本当に必要なのだろうかと疑問に感じるのだった。

 ナタリー修道長が部屋を出て行って、少年はマリアと二人きりになるととても緊張しているようにマリアには思えた。それで少しでも緊張をほぐそうと思ったのだった。
 「学校の勉強はどこまでしたのかしら?」
 「あ、あの・・・、小学校までです。小学校を卒業すると同時にあの僧院に預けられることになったのです。」
 「そう。それじゃ、中学の勉強はまだ全然したことが無いのね。わかったわ。今日は取り敢えず、英語の勉強から始めようかしら。ああ、いいのよ。そんなに緊張しなくても。もっと肩から力を抜いて。」
 マリアは緊張をほぐそうと軽く少年の肩に手を触れたつもりだった。しかし少年はマリアに触れられた途端に身体をビクンと大きく動かした。
 「どうしたの? びっくりした?」
 「あ、あの・・・。」
 少年は突然お腹を両手で抑え始めた。
 「どうしたの? お腹が痛いの?」
 「え、ええっ・・・。ちょっと、おトイレ・・・行ってきます。」
 そう言って少年はお腹を抑えながら部屋を走り出ていく。一人になったマリアは首を傾げている。
 (どうしたのかしら・・・。さっきまで凄く普通そうだったのに。)
 マリアには何となく違和感があった。少年が抑えていたのはお腹というより、もう少ししたの下腹部だったような気がしたからだ。
 マリア自身にも下腹部に違和感があった。手で上から抑えてみると僧服を通して硬い帯の感触が感じられる。
 (ああ、もう早くこれを外して貰いたい・・・。)
 少年が戻ってきたのは10分ほど経ってからだった。しかしその後は、ヤコブは妙にマリアから距離を取ろうとするのだった。

貞操帯外し

 「どうです。ヤコブの勉強は無事済みましたか?」
 「はいっ、ナタリーさま。どうか、もうこれを外して頂けませんか?」
 「それの着け心地はそんなに悪いですか。昔は悪い粗相をする修道女は一日中着けさせられたものです。中には一週間着けっ放しという例もあります。」
 「そ、そんなこと・・・。それではおトイレにも行けませんわ。」
 「ふふふ。そのまま垂れ流せばよいのです。それはそれは惨めな思いがして丁度良い折檻になるのです。でも貴女の場合は折檻ではないので今外してあげましょう。」
 ナタリー修道女長は漸く鍵を取り出して貞操帯をマリアの腰から外すのだった。
 「こんなものが本当に必要なのでしょうか?」
 「これはあの子の為だけでなく、貴方の為でもあるのです。少しでも不埒な思いを起こさない為のね。あの子はまだ子供であるとは言っても、男であることに変わりはありません。用心に越したことはありません。」
 「そうなのですか・・・。分かりました。」
 マリアはナタリー修道長からヤコブの勉強の面倒を見る際には、それを着けねばならないのだと知らされて絶望感に駆られた。あの闖入者が同じものをマリアに強要したからだった。一生外して貰えないのではないかと不安でたまらなかったのだ。

マリア

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