妄想小説
女子修道院の隠された秘密
十
一同がジョルジュの後に従って薄暗く黴臭い狭い通路を降りていくと、途中を頑丈そうな分厚い木製の扉で仕切られた廊下に出る。そこには一人の修道女が待ち構えていたのだった。ジョルジュがその修道女に一礼をするのでイワンとヤコブの二人も同じように頭を下げる。
「こちらの袋の中に番号札のついた鍵が三つ入っています。順に袋の中に手をいれて一つずつ鍵を取り出してください。まず貴方から。」
扉の前で待ち構えていたのはナタリー修道長の腹心の部下、ルチアだった。ナタリー修道長の指示どおり、最初に最も若い修道士見習いのヤコブに袋を差し出す。ナタリーは二つある袋の片側を抑えて持っているので、差し出されたヤコブが手を差し入れる方には同じ鍵が三つだけ入っている。
「それでは、今度はそちらの方。」
そう言ってルチアは袋を持ち換え、ヤコブが差し込んだ方の袋を閉じもう片方の袋側だけを開いてイワンに差し出す。
「残りは貴方です。」
そう言ってルチアはジョルジュにも番号札の付いた鍵を一つ持たせる。
「その鍵を持って二階の部屋へそれぞれ向かってください。私はこちらの扉を施錠してから向かいます。」
ルチアは必要最小限のことだけ口にすると、男性三人を二階へと向かう階段の方へ進むよう促すのだった。
若いヤコブが先輩格のジョルジュに促されて向かった部屋は階段を上がってすぐの扉でヤコブが持つ鍵の札と同じ3番の刻印がきざまれた札が付いた部屋だった。おそるおそるヤコブが鍵穴に鍵を差し込んで回すと、するりと鍵は解錠された。
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