妄想小説
女子修道院の隠された秘密
二十四
「イワノフ神父さま。」
礼拝堂に一人で戻ってきたマリアの格好を見て老神父は驚く。普通は床下に付くぐらいの長さがある筈の僧衣が太腿の付け根近くまで露わになっているからだ。
「ああ、神父さま。そんなに見つめないでください。あの男に僧衣の裾を切り取られてしまったのです。」
「しかし一人でやって来たと言うことは儂を助けに来てくれたのか。」
「いえ、そうではありません。私はあの男にある事を言い使ってここへ参ったのです。」
「ある事を言い使った? 自由になったのならお前独りででもここから逃げ出せばようではないか。」
「それは出来ません。こんな脚が剥き出しの僧衣で、実はこの下は下着すら着けさせて貰えていないのです。それにまだ手錠も掛けられたままです。」
老神父はマリアが脚を露わにしながら下着も着けていないと聞いて、また股間が疼いてくるのを感じ始める。
「あの男はどうしているのだ? 何を言いつかったというのだ?」
「これをご覧ください、神父様。」
マリアはくるりと振り向いて、手錠を掛けられた後ろ手に握ってきた二枚の写真を腰を落として神父の目の前に並べる。
「こ、これは・・・。お前たち、儂の机の抽斗を開けたのだな。鍵を掛けておいたのに。」
「神父様の鍵束はすべてあの男が持ち去りました。今もまだあの男は神父様の部屋をいろいろ探っている筈です。私にこの写真に写っている修道女がどうしてこんな目に遭ったのか、その後どうなったのかを聞き出して来いというのです。それをきちんと伝えれば解放してくれると約束したのです。」
「約束だと・・・? あいつがそんな約束を守るという保証があるのか?」
「それは分かりません。でも信じるしかないと思うのです。この方はどなたなのですか。神父様はご存じなのですか?」
「そ、それは・・・。」
「正直に話してくださらないと、あの男は神父様の・・・、そのう・・・あそこの部分を切り取るとまで言っていました。」
「あそこの部分だと?」
老神父はさきほど男が容赦なく自分の股間を蹴り上げたことを思い出した。
(あの男ならやりかねないな・・・。)
今はかろうじて僧衣の裾で隠されているが、老神父自身も下着は脱がされて僧衣の下で陰茎が丸出しなのだった。
「わ、わかった。今、話す。ううむ・・・。どこから話したものか。」
神父は遠い昔を思い返すかのように、一度目を瞑って暫く考える。マリアは写真を置いた老神父の真正面に跪いて神父の言葉を待つのだった。
「あれはお前がこの修道院にやって来る少し前のことだった。そこの写真に写っているのはマルタという修道女なのじゃ。もちろんマルタは守護聖人の零名で、本名は確か生野里帆と言っておった筈じゃ。今のお前に年恰好もそっくりでな。やはり同じ修道女見習いという身分だったのじゃ。」
そこまで話したところで神父は一旦言葉を途切らせ暫く瞑想に耽る。
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