妄想小説
女子修道院の隠された秘密
十一
分厚い木の扉が重そうな音を立てて軋みながら開くと中は真っ暗闇だった。
「ヤコブと申します。どなたか居られるのですか?」
すると部屋の奥の暗がりから女の声がするのだった。
「扉の脇に小さなテーブルがあって、そこにアイマスクが置いてあります。それを取って扉を閉めなさい。」
ヤコブが框に立って扉の脇を観ると廊下の微かな明かりからテーブルらしきものが見え、その上にアイマスクらしきものが載っているのが見えた。一歩、暗闇の中に踏み込んで扉を閉めると真っ暗闇になってしまう。
「闇の中でもアイマスクは着けれますね。頭巾を取ってそれを眼の上に被せるのです。」
「はい。わ、わかりました・・・。」
ヤコブが手探りでアイマスクを広げると頭から頭巾を外して代わりにアイマスクを眼に掛ける。
「出来ましたか?」
「は、はいっ。あの・・・、貴方は?」
「訊く必要はありませぬ。」
にべもない答えにヤコブは口を噤むしかなかった。
シュッっという音がして硫黄の微かな臭いがする。マッチで蝋燭に火を灯したらしかった。アイマスクの縁に微かな光が洩れているのでそれと知れるのだった。
「ゆっくり、真っ直ぐに歩いてきなさい。恐れることはありません。ゆっくりと真っ直ぐ前へ進むのです。」
「は、はい。分かりました。」
ヤコブがおそるおそるではあるが一歩ずつ前へ進んでいく。
「そこで止まって。貴方のすぐ前に寝台があります。手探りでそこへ身を横たえるのです。」
「は、はいっ。」
ヤコブが腰を屈めて手を伸ばすと柔らかなクッションに糊の効いたシーツが掛かっているのが分かる。手探りでベッドの形を探りながらゆっくりと自分の身をそこへ横たえる。
「両手を万歳の形に肩の上へ挙げるのです。」
「は、はいっ。」
訳が分からないまま、言われた通りにヤコブが両腕を広げて頭の上辺りに横たえる。その手首に何かが巻かれていくのが感じられる。
(えっ、何・・・?) 手の感触から両手首が縄のようなもので何処かに括り付けられたようだった。
「怖がることはありませんよ。ただ身を任せていればよいのです。感じるがままにおのれの気持ちに従順になって身を任せているのです。」
「で、ですが・・・。わ、わたしは何を・・・。」
「喋ってはなりませぬ。これから大人になる為の大事な儀式を執り行います。貴方が何かをする必要はありません。感情のままに身を横たえておればよいのです。」
喋ってはならないと言われて、ヤコブは余計に不安に駆られる。先輩の修道士からは大事な教えを受けるのだから素直に従うこととだけ言われていた。
やがて腰に巻いた腰ひもが緩められ解かれると、僧衣がたくし上げられたらしいことに気づく。次に感じたのは下着を下されていく感触だった。
(ぬ、脱がされるのだ・・・。)
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