接待5

妄想小説

恥辱秘書






第十二章 忍び寄る脅迫者


 一

 席へ戻った裕美は、机に向かって再び同じことを反芻して考えてしまう。
 (美紀さんはああ言っていたけど、自分がホテルで寝ていたのは事実だ。しかも下着も着けていなかった。だけど、他の着衣はしていたのは何故なのだろう。少なくとも裸ではなかった。相当酔っていたので、セックスなんて出来るのかしら。気分が悪くなって、タクシーで耐え切れなくなったので、沢村さんが気を利かして、すぐ近くにあったホテルに部屋を取って運び込んでくれたのではないかしら。でも、何故下着が無かったのだろう。どこへ行ってしまったのだろう。あの部屋で、脱がされたのなら、あそこに落ちている筈だわ。沢村さんに持っていかれたのかしら。そんな趣味が・・・。いやっ、まさか。でも正体なく寝込んでいるのに、裸にしないで、パンティだけ奪うものかしら。それとも裸にされて、その後着せられた・・・?でも、何でそんなこと?何も無かった風を装うため?・・・だったら何故下着がなかったの?・・・・)

 よっぽど、美紀に打ち明けて相談したい裕美だった。(が、そんな失態はまさか話せない。ましていつもライバル心剥き出しにしているのは裕美も感じていた。そんな秘密を明かして、どこで喋られてしまうか判らない。だからと言って、何の事情も知らない他の人にはもっと話せないし・・・)

 どこまで考えても堂々巡りをしてしまう裕美だった。そのうち、裕美はだんだん自分に都合のいいストーリーを思い描くようになっていった。
 気分の悪くなった裕美を沢村さんは本当に心配して、送ってくれると言ったのかもしれない。それだけ呑ませたことに責任を感じていたのかも。きっと途中のタクシーで気分が悪くなったと言ったのかもしれない。それで、とにかく近くにあったホテルに担ぎこんだのだわ。気分がおさまるように衣服だけ緩めて。女とふたりでホテルで過ごしたなんで知れると、具合が悪いので、用があるとか書き置きして、独りで帰ってしまったに違いないわ。そう、そうよ。それに違いない・・・。でも、下穿きはどうしたのだろう。そうだ、あそこでトイレに立った時に、きっと脱いで、・・・それから気持ち悪くなって吐きそうになって。きっとそれで慌ててトイレに忘れてきてしまったんだわ。下穿きを脱ぐなんて、トイレしかあり得ないもの。あの店かしら・・・。どうしよう。)
 そこまで考えた裕美だったが、何処にある何という店かも判らない。もし知っていたとしても、トイレに自分の下着が落ちていなかっただろうかなどとは、訊ける筈もなかった。
 (自分のが落ちていたとしても、知らん振りをするしかないのだ・・・。)そう思い込むしかない裕美だった。

 そんな安易な楽観視を根底から覆すようなメールを、それから暫くして裕美の気持ちもやっと落ち着いてきた頃に受け取るのだった。
 次第に明るさを取り戻し、元気溌剌で職場に現れた裕美だったが、朝一番にメールをチェックした裕美は画面に出てきた一通のメールに凍り付いてしまったのだ。
 メールのタイトルは「こんな写真を手に入れてしまいました」というものだった。裕美が通常受け取るものは、「xx会議の召請」だとか「xx稟議の承認について」だとか「xx月例報告に関して」とか言った、自分が仕える重役に関する事務的な連絡が殆どだったからだ。そのメールは、社内から発信されたものとは思えなかった。社外からのメールをインターネットを通じて受け取ることもなくはなかったが、それとても新聞社や商工会議所、業界誌からのインタビュー依頼など、これもやはり重役がらみの案件が殆ど。同僚の秘書仲間では、男子社員からの飲み会の誘いやら、合コンの誘いなどもメールを使って私的に使われているようだったが、晩生の裕美にはそのようなものは縁遠かった。
 そんな毎日だったので、その日のメールは明らかに異常だとすぐにピンときた。忘れかけていたものが突如として蘇えってきたのだ。高鳴る鼓動を抑え、震える手でそのメールをダブルクリックした裕美の目に飛び込んできたのは、一番見たくない光景だった。

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