妄想小説
恥辱秘書
第二章 嵌められたもう一人
一
芳賀章一郎は、本当にひょんなことから、もう一人、美紀に似た立ち振る舞いの女の見つけたのだった。それは芳賀が週一回慢性の眼病の薬を貰う為に通っている会社の診療所の受付の女だった。もう随分前から、その診療所には通っていた芳賀だったが、ある時、全くの偶然でその女の振る舞いに気づいたのだった。
その女は、診療所では新任で、見習い看護婦らしかった。診療所では主に受付嬢をしていた。芳賀がいつもの様に薬を処方して貰う為に診察願いをだそうと受付の窓口で待っていた。その女は向こう向きに机に座って書き物をしていたのだが、芳賀が来ているのに気づき、座っている回転椅子に座ったままくるっと振り向きそのまま立ち上がって芳賀の前にきたのだった。その時の仕種がまず深堀美紀に似ているような気がした。そしてその後、何故そう思ったのか思い当たった。
その若い看護婦見習いの女は、椅子に座っているとき、短いスカートなのに脚を開いたままで、こちらに向き直って立ち上がる時も膝を閉じていなかったのだ。白い白衣の制服は看護婦によって思い思いの丈ではあったが、その娘のものは、自分で仕立て直したらしく、ミニスカートのように短かかった。芳賀にはちらっと白衣の裾の奥に白い下着が見えたような気がした。
娘から診察願いのカードを返してもらって、診察室へ向かう時、あらためてその娘の後ろ姿をしげしげと眺めた。丁度、奥の診察室にカルテを持ってゆくところだったが、歩き方が少し脚を外に向けながら、がに股風になるのが美紀とそっくりだった。
(まさか、 ・ ・ ・ )
芳賀自身もそんな偶然を疑った。
芳賀はその看護婦見習いに興味を覚え、いろいろ調べはじめた。名前は社内メールのアドレス帳ですぐに判った。田代晴江という名だった。
社内の風評で、田代には社外に付きあっている男性が居ることも分かった。愛くるしい顔立ちで、社内でも人気があり、交友関係も噂の的だったからだ。
田代晴江が付きあっている相手というのが、どうも飛行機のパイロットらしいということを人伝に聞いて、芳賀は直感が働いた。
そして、その週末、とうとう芳賀は街中で腕を組んで歩く田代とその相手を目撃する。芳賀はその顔を頭に刻んだ。
芳賀は、美紀を呼び出し、家から美紀の夫の航空学校の卒業アルバムを持ってこさせる。ちょうど海外にフライトで出掛けていて留守の筈である。この頃には芳賀は美紀の夫の飛行日程まで把握するまでになっていた。
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