接待1

妄想小説

恥辱秘書







第十一章 謀られた接待劇


 一

 あの日、秘密のSM倶楽部で演じさせられた、いまわしい芸は芳賀をいたく歓ばせた。帰りの車でも上機嫌だった。そして、あの成功に免じて褒美をやるとまで言ったのだった。その褒美というのがどんなものなのか、美紀には想像もつかなかった。芳賀の言いっぷりからは、いつもの辱めとは違う何かであるとは感じ取っていたのだが。

 芳賀はSM倶楽部の芸の前に美紀が見せた、幸江を使って矢作を陥れた演技にも密かに感心していた。その演技力を使って、またひとつの新しい姦計を思いついていたのだ。

 芳賀はいろんな噂話から、深堀美紀が、事業所長の役員秘書である内村裕美にライバル心と嫉妬心を抱いていることを気づいていた。それを使って二人を更なる辱めに陥れようと計略していたのだった。

 芳賀や美紀が居る建屋は、設計本部長である執行役員の吉村のテリトリになっていて、深堀美紀はその吉村の秘書であり、庶務課員でもある。吉村テリトリの設計本館で総務の仕事を一手に引き受けている芳賀は吉村の部下であり、庶務としての美紀の上司ということになっている。

 設計本館とは別棟で事務本館という建物があり、そこはいわば会社の中枢の司令塔であり、この工場の事業所としての最高責任者の長谷部が居るところである。そして吉村より位が二つ上の専務である長谷部は、この地区の事業所長なのだ。従ってこの地区の一番上の地位ということになる。
 芳賀としては、その長谷部の秘書を手玉に取るということは、ゆくゆくは会社内での支配力、それも陰の支配力を持つチャンスを意味していたのだ。

 美紀に小便臭い身体のまま、ライバルの裕美に逢いにゆかせ、屈辱を味あわせたことは、美紀に、今度は逆に裕美を陥れる誘惑をもたらすことを計算していた。同僚の仲間だった幸江を、自分の窮地を克服する材料に使わせたことも、同じ女子社員を貶めるのに慣れさせる一ステップでもあった。少なくとも、幸江を陥れた罪では共犯にさせた訳で、その意味で否が応でも美紀は芳賀の命令に逆らうことが出来なくなってしまっている。

 芳賀は再び美紀を屋上へ呼び出し、奴隷の身であることをしっかり認識させる為に、素っ裸になることを強要し、後ろ手に手錠を掛けさせ、目の前に跪かせて芳賀の計略を聞かせたのだ。
 前回、美紀に聞き出させた長谷部専務の日程スケジュールから、長谷部が出張で不在にしている日を事前に掴んでいた。その日に、贋の接待をでっちあげることにしたのだ。
 長谷部の事業所の主要得意先であるN社には、商品を買ってくれる購買部署に沢村という購買部長が居た。このクラスになると、事業所長である長谷部が出向いて接待するのは当たり前という事情にあった。接待は通常、営業部が取り仕切るので、長谷部が出向くとはいえ、秘書の裕美が同席することはない。接待される側の購買部長が秘書を持てるような役職ではないので、秘書を連れてとなると相手側に失礼になるからだ。従って、秘書の裕美もN社購買部長には面識がない筈だった。
 連絡役には代役としてすべて美紀を使った。それも芳賀自身の代役ではなく、執行役員の吉村の代役としてである。芳賀は長谷部、吉村が共に不在の日を狙って、美紀に長谷部の秘書、内村裕美に電話をさせた。

 「そうなの。急な接待で、それも内密らしいの。何か重要な取引が絡んでいるらしくて、私達には内容はまったく教えて貰えないのだけれど。・・・そう、そうなの。それでうちの上司のほうから出張先の長谷部専務に連絡を取ったら、専務は現地から直接駆けつけるというの。内密だから営業を動かすのはまずいということになって、私が駆り出され、長谷部さんは秘書のあなたにも同席して接待の手伝いをしてほしいということなの。・・・そう、それで、こっちも今、執行役の吉村さんが病気で宴会には出れないので、代役で総務の芳賀課長が出るのだけれど、こっちは代役だから、是が非でも長谷部専務に出て貰わないと、先方に顔が立たないという訳なの。・・・そう、それで、これから車を回して、1階のロビーのところで待ってて貰える?私も一緒に行くから。外出出来る格好でね。・・・そうそう、それから、くれぐれも内密だから、誰にも何処へ行くとか言っちゃ駄目よ。長谷部さんからも念を押されてるから。・・・」

 いかにも尤もらしい話に、内村裕美は簡単に騙されていた。あらゆるところに目を配って取り得る限りの情報を常に仕入れている美紀と違って、お嬢さま育ちで、言われたことだけを素直にこなしているだけの裕美ならではのことだった。

 事務本館のロビーで待つ裕美の前に、芳賀が運転する黒塗りの社用車が乗り付けられた。後ろの席から少しだけ窓ガラスを下ろして美紀が手招きする。何も疑わない裕美は、引き寄せられるように美紀の居る後部座席に乗ってきた。
 その日の裕美はいかにも役員秘書を彷彿させるような、フリルのタイのついた白いブラウスの上に、薄ピンクのツーピースのスーツだ。濃い目のタイトなダークスーツの美紀とは対照的で、性格も反映しているようだった。車は、上得意などのVIP を乗せるのに利用しているレンタカーの高級外車で、窓は目隠しのシートが貼られて、外から覗かれない代わりに窓ガラスを下ろさないと外の景色もよく見えない。前部運転席と、後部車室も内密の話をするときに使うガラスの仕切りがあり、これにもブラインドシートが貼られている。芳賀は行く先を悟られないようにする為にわざとこの仕切りも上げていた。

 芳賀が二人を案内して連れていったのは、実は先日使った秘密の倶楽部の一室だった。ここは秘密の接待をする際にも使われているものだ。駐車場もビルの地下にあるので、降り立った女二人も何処に連れてこられたのか判らない。
 駐車場からエレベータで更に下の階へ降りていくと、上品に暗くした雰囲気のあるロビーに出て、そこから延びる廊下の奥に個室がしつらえてあった。

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