接待81

妄想小説

恥辱秘書






第十二章 忍び寄る脅迫者


 三

 午後2時5分前きっかりに、裕美は秘書室を出た。何か用事があって行くのを装うために、適当な書類を見繕って、書類入れに突っ込み手に持った。長谷部は外出してしまったので、用を言いつけられる心配は無かった。
 誰かに出会うのを避ける為に、エレベータはわざと使わず、階段を下りた。事務本館から体育館までは歩いてすぐなのだが、メインの通りをとおると誰かに出会う心配もあったので、駐車場を抜けて少し遠回りになるが、あまり人通りのないほうを通っていった。体育館と通常の敷地は一応金網のフェンスで仕切られているが、数箇所に通り抜けられる出入り口がある。事務本館側からは一番目に付きにくい端の入口から体育館脇に出た。ひっそりして誰か居るような気配はない。メインの入口とは反対側にある通用門から体育館に入る。誰も居ないとは思いながらも、音を立てないようにこっそりと忍び込む。エントランスホールから講堂への扉をそおっと開ける。中には誰も居ないことを確かめると静かに扉を閉めて、体育館の床張りを斜めに突っ切って、ステージの右奥にある男性用トイレに真っ直ぐ向かう。勿論、男性用トイレには入ったことはない。
 コの字型に曲がった細い廊下を抜け、トイレのドアを少しだけ音を立てないように開いて中を窺がう。何の音もせず、誰も居ないようだった。
 (後から来るつもりなのだろう。ここで少し待たせるのかしら。)
 不安な面持ちのまま、男子トイレの中に入る。普段目にすることのない男性用便器のアサガオを目にすると、顔が赤くなる。誰か他の人が来るといけないので、個室に隠れて待とうと、指定された真ん中の個室の扉を開け、音を立てないようにそっと扉を閉め、鍵を掛けてふと前を見た裕美は、血の気が引くのを感じた。
 目の前には、先ほどのメールにあった画像のような写真が印刷された紙が貼ってあったのだ。前回のメールのものよりもより鮮明だった。今回は手書きでマジックのようなもので目の部分が黒い線で消されていて、一応誰だか判らなくされているが、間違いなく裕美自身の顔であるのは間違いなかった。
 画鋲ピン一本でトイレの個室の壁に貼られていたそのプリント用紙を、引き千切るように外すと、裏に更にプリンタで印刷したらしい文章があるのを見つけた。裕美はへなへなと洋式便器の上に座り込んで、その文章を見つめていた。

 「俺は企業のスキャンダル情報を週刊誌などに売る商売をしている。お前が俺の命令に従順に従うなら、これは内密にしておいてもいい。全てはお前の心掛け次第だ。お前が俺に従順に従うかを試す最初の命令を下す。今すぐ身に着けているパンティとブラジャーを取ってここへ置いて外に出ろ。2時5分きっかりにお前の事務所へ電話を掛ける。出なければ命令には従わなかったものと判断する」

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