接待bb

妄想小説

恥辱秘書






第十二章 忍び寄る脅迫者


 七

 男子トイレに滑り込むように忍び込むと、いつものようにそおっと真ん中の個室の扉を開ける。その裕美の目にすぐ入ったのは見慣れないものだったが、すぐにそれが何だか判った。
 腰掛式便器の後ろ側の壁に天井近くの水溜めから降りてきているに水道管の途中に銀色に光るものがぶら下がっている。二組の手錠だ。本物を見たことはなかったが、すぐにそうだと判る。  片端が水道管そのものに嵌められていて、腰よりちょっと高い位置の壁に水道管を固定するステーの継ぎ手の所で停まってぶらさがっているのだ。そしてその反対側は錠がおりてなくて開いている。蓋を閉じられた便器の上には茶色の紙袋が載っている。
 中を覗くと、紙に書かれた手紙となにやら布切れが見える。取り出してみると、いつものようにプリントアウトされて筆跡のわからない手紙と、布切れにみえたのは目隠しの為のアイマスクだった。
 「アイマスクをつけてから、両手を後ろ手にして壁の手錠に嵌めること。そのままの格好で待っていろ。」
 美紀が嘗て命じられた格好そのものだ。手錠を嵌める溜めには、大きく脚を広げて便器を跨ぐようにしなければならない。試しに手が届くか裕美は便器に後ろ向きに立って後ずさり、手を背中に回して手錠を探る。背のそれほど高いほうではない裕美には、手首を少し持ち上げるようにしなければ手錠の先が届かない。かなり苦しい格好だった。しかし出来ない訳ではない。
 裕美は視界を奪われ、両手の自由を奪われた格好で男を待つことが何を意味するかを考えていた。裕美の身体を欲しいままにしようとしているのは疑いはなかった。おそらく犯されるのだろう。知らない男に無理やり身体を自由にされ、貞潔も奪われるなど、考えただけでぞっとするおぞましいことだった。しかし、裕美にはそれから逃れるうまい手立てはない。
 (男はどうもお金が目当てではないらしい。多少の貯金ならあるが、勤めてまもない独身のOLが溜め込んでいる貯金など高が知れている。そんなことは向こうも先刻承知だろう。向こうが求めているのは、女の身体なのだ。)
 裕美は、最後は自分の貞操を奪われるのはもしかしたら仕方のないことなのかもしれないと半ば諦め始めていた。スキャンダルが公けになったら、自分の面倒を見てくれている専務にも会社にも大変な迷惑を掛けることになる。郷里の親元にも知れてどんな悲しい思いをさせるか判らない。幸い、相手の男は、自分の下着を集めたり、女をノーパンで歩かせて、いい気になっている気の弱い男に違いない。自分の身体を与えることで、満足してそれで忘れてくれるならそれでもいい、そんな気持ちにだんだん傾いてきていたのだった。
 裕美は意を決して、アイマスクを目に掛け、後ろ向きになって背中に手を伸ばした。さすがに手錠を手首に嵌めるのには勇気が要った。が、今更どうなるものでもない。裕美は運を天に任せる気分でガチャリと手錠を嵌めた。

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