誘惑1

妄想小説

恥辱秘書






第十七章 仕組まれた罠


 一

 芳賀は、次には裕美の上司である長谷部までも、裕美を餌に使って陥れる姦計を密かに練り初めていた。長谷部を意のままに操ることで、会社の実権を握ろうというのが芳賀の野心だった。
 これの実行の為には、裕美を意のままに操ることが不可欠だったのだが、裕美はもう既に美紀を通じて手中にあるも同然になっていたのだ。

 休みの日を使って、芳賀は裕美の恥ずかしい痴態を捉えるのに設置したのと同じ監視カメラを長谷部の執務室にも取り付けることに成功した。鍵は美紀を通じて、裕美から手に入れていたのだ。
 監視カメラの設置などは芳賀にとっては、何でもない容易い仕事だった。部屋の何処に居ても死角なく撮影が出来るように、部屋の四隅にカメラは据えられた。リモコンによって、角度、望遠がコントロール出来る最新鋭の器械で、無線で芳賀のパソコンにまで送信されるようになっていた。
 長谷部に怪しまれない為に、事務本館のエレベータホールのあちこちにもダミーの監視カメラを取り付けてあった。長谷部には電話で、防犯用に監視カメラを取り付けることになったことを話しておく。しかもその時に、(監視カメラに関する情報は、セキュリティ上極力外に洩れないようにしています)と付け加え、長谷部が不用意に誰かに確認することがないようにしてあった。

 準備が出来たところで、芳賀は美紀を通じて、裕美に命令どおりに動くように裕美に指示を送った。
 「制服のスカートの裾は更に10cm短くすること。ストッキングは穿かずに常に生脚で居ること。長谷部の前でわざと書類を取り落として、スカートの裾の奥を覗かせること。書類を捜すのに、書棚の一番高いところを、脚立を使って昇って捜したり、長谷部が居る時に机の上にあがってシャンデリアの電球を交換すること、等々」細かいやり方とタイミングが面々と書かれているメモが電子メールで送り込まれた。裕美には指示通りに従っているかどうか、監視カメラで見張られていることが知らされていた。(言うことを聞かない場合には会社じゅうにばら撒くぞ)という脅しの文句とともに送られた写真は、体育館のトイレの壁にもたれかかるようにして、お尻のほうからバイブを突っ込んでオナニーしている自分の姿だった。裕美はその写真を見て、長谷部を裏切ることに後ろめたさを覚えたが、命令に従わない訳にはいかないことを悟るのだった。

 裕美の役目は執務室に居る長谷部を挑発し、誘惑することだった。痴態を演じて見せることは、沢村の接待で否が応でも取らされる恥ずかしい格好のせいで、多少感じがつかめていた。
 制服を持ち帰って、丈を短く切り詰めて直して持ってきた翌日、朝のお茶を運ぶのから、裕美の痴態は始まった。
 「失礼します。お茶をお持ちしました。」
 「あ、そう。ありがとう。」
 ちらっとだけ顔を上げて、新聞に目を戻そうとしていた長谷部の視線が一瞬止まった。裕美は自分の剥き出しの太腿に視線が走るのを感じて、覚悟をしてきてはいたものの、恥ずかしさに真っ直ぐ長谷部のほうを見ることが出来ない。少し俯くように下のほうを見ながら、長谷部の机に近づき、盆に乗せられた湯呑みを静かに置く。
 部屋の四隅にある監視カメラが、実際に覗いている男の眼のように感じられた。裕美は自分の一挙手一投足が見張られているのを意識する。
 細かく指示された通りの行動に移る。長谷部の処理済みの書類棚から要郵送の紙包みを取ると、持ち帰って処理するのだが、普段の動作なのに手が震える。どこまでが演技なのか、裕美にも判らなくなる。
 「お預かりします。」
 そう言って書類の束を摘み上げるように持ち上げ、自分と長谷部の間の床にぽろりと落とす。
 「し、失礼しました。」
 そう言うと脚を折ってしゃがみこみ、書類を慌てて拾い集める。裕美は長谷部のほうを見て居ないが、下半身に視線が注がれているのを身体で感じとっている。長谷部の喉がごくんと鳴ったような気がした。誤魔化すかのように長谷部がゴホンと咳払いをしている。
 「書類はすぐに送っておきます。何か用がございましたら、秘書室に居りますのでお声をお掛けください。」
 裕美は手応えを感じとって、執務室を出た。

 長谷部はどちらかと言うと性には淡白なように見えた。本社との行き来による激務で疲れて、それでころではないのかもしれないと裕美は思っていた。事業所長という責任の重さも、専務という立場上の体面も、長谷部に迂闊な行動をしないように節度を持たせているのかもしれなかった。

 しかし、やはり長谷部も男であった。裕美のような若い女性の淫らな振る舞いは、男としての節操に迷いを生じさせているのは明らかだった。

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る