妄想小説
恥辱秘書
第八章 書庫室への罠
一
美紀が雫を垂らさないように、慎重に片方づつ脚を床に下ろしたところで、芳賀が抱きついてくるように美紀の真正面から後ろ手で繋がれた手錠のほうへ手を伸ばして、手錠の鍵を外そうとしてきた。美紀は芳賀になるだけ擦り寄らないように身体を後ろへ反らして、手錠が外されるのを待った。
手錠は２本あって、片側が美紀の手首に、反対側は掃除用具室の洗水盤の蛇口に嵌められていた。芳賀が鍵を外したのは、蛇口側のほうだけだったのだ。しかも、蛇口に嵌められていたほうが、今度は、もう片方の美紀の手首に嵌められたのだ。
「あ、何を・・・。」
いつものように手錠を外してもらえると期待していた美紀は、芳賀の行為に不安を感じて蒼ざめた。
美紀は後ろ手に手錠をされたまま立たされている。下半身は濡れた下着を身に着けたままである。突然、後ろ手の自由でない手にビニル製の被いの付いた書類袋が渡された。人事書類などを持ち歩く時の書類入れだ。それは手に嵌められた手錠を隠す為のカムフラージュに違いなかった。後ろ手て書類入れを抱えていると、それほど不自然には見えない。
次に美紀の片耳にイアホンが嵌められた。外れないように耳掛けのついたタイプのもので、携帯電話のハンズフリー用のものだ。そしてそれに繋がっているらしい小さな携帯電話が美紀の制服の胸ポケットに入れられる。イアホンのコードは目立たないように制服のベストの下に通される。
最後に、目隠しのアイマスクが外された。芳賀は自分の携帯の呼び出しボタンを押す。美紀の胸ポケットの中が無音でブルブル震える。その受信ボタンを押すと、暫くそこに居ろというように目で合図すると、静かにトイレの清掃用具室を出て行った。
次へ 先頭へ