粗相1

妄想小説

恥辱秘書






第十三章 新たなる調教の罠


 一

 翌日、美紀は再び芳賀に設計本館の屋上に呼び出されていた。例によって、芳賀の前では衣服を全て脱いで素っ裸で跪くこと、後ろ手に自ら手錠を掛けることが命じられていた。芳賀と二人きりになるときは、完全に主人の前の奴隷を演じることを覚えこませるための演出で、美紀は芳賀に、「こんなことをしなくても、貴方に服従します。」と許してくれるよう頼むのだったが、芳賀は許さなかった。芳賀は気位の高い美紀がそんなに簡単に奴隷として屈服することは無いというのを見通していたし、だからこそ美紀を辱めて従わせることに意味があったのだ。
 芳賀は美紀に、自分の手でライバルを貶め、辱めを与えたことの感想を聞いていた。美紀は本心を語ったものかを思い悩んだ。自分を出し抜いていた裕美に嫉妬心はあったし、その裕美の窮地を見ることは、ある意味で、美紀の溜飲を下げさせることになった。いや、それにも増して、相手を貶めることに快感を覚えなかったと訊かれると、俄かには否定できないものを感じていた。そしてそういう感情を持ってしまうことを密かに懼れてもいたのだ。
 「答えないところをみると、満更でもなかったようだな。どうだ。」
 そんな美紀の感情を見透かすかのように芳賀は言った。
 「しかし、まだ懲らしめたりないだろう。次にはどんな目に遭わせてやりたいんだ。言ってみろ。」
 正直言って、美紀には裕美の窮地を救ってやりたいという気持ちは湧いてこなかった。逆に、このまま裕美を責め続けていたら、どうなってしまうのかを見届けたい気持ちが沸々と湧き上がってくるのを感じていた。しかし、そんなことを芳賀の前で口にすることはさすがに躊躇われた。
 「お前には、SM倶楽部で客の前でおしっこ飛ばしを披露させたが、気持ち良かったのか。口惜しくはないのか。役員秘書の内村裕美は、男子トイレでこっそり立小便させられたが、お前以外には誰にも見られちゃいない。お前は格下だから、SM倶楽部の見世物で立小便という訳だ。分相応という訳か・・・。」
 そこまで言われて、美紀に口惜しさがこみ上げてくる。SM倶楽部のステージに立たされ、客の女から侮辱された時の屈辱感が蘇えってくる。次に脳裏に浮かんだのは、小水に濡れた下着を身につけたまま、裕美の前に行かされた時だった。臭いに気づいて顔をしかめた裕美の顔と、その時の恥ずかしさが浮かんでくる。
 「どうだ、やっぱり口惜しいか。」
 美紀は、芳賀の言葉に思わず首を垂れて頷いてしまう。
 「それじゃ、裕美にも恥ずかしい場所でお洩らしをして貰いたいんだな。」
 「・・・、はい。・・・。」
 「どこで洩らさせたい。言ってみろ。」
 「・・・・。長谷部専務の執務室です。」
 「ほう、何故だ。」
 「秘書に取って、お仕えする上司の執務室は最も神聖な場所です。そこを汚すということは、自分の職務のプライドを穢すということです。私だったら絶対嫌です。」
 「なるほど、それも一理あるな。・・・ならば、裕美に長谷部の執務室でお洩らしをさせるように企んで見せてみろ。」

 芳賀に裕美を辱めるアイデアを一晩考えてくるように命じられた美紀は、自分なりの策略を考え、次の日に屋上で芳賀に説明する。芳賀は幾つかアイデアの足りない部分を補足し、策略がほぼ完成したところで、芳賀は美紀に実行を命じる。

 アイデアは基本的に美紀が陥れられた方法を盗用したものだった。まず、裕美に再び情報屋を装ったメールを発信する。裕美に従うように脅す為に、先日美紀が背後から撮影した、裕美が男性小用便器に跨るようにして放尿しているショットが使われる。裕美の動きは全て把握されていると悟らせ、従わない訳にはゆかないように思わせる為である。
 (写真をばら撒かれたくなかったら、言いつけどおりに行動すること)という命令のメールを受けるのである。

 メールの指示は次のようなものだ。まず、指定された日、長谷部の不在の執務室にトイレから掃除用のバケツを持ち込ませる。その上で、以前と同じように目隠しのアイマスクと後ろ手錠を掛けて待たせるというものだった。

 その日の朝、裕美は「情報屋より」という添付画像付きのメールを受け取る。メールタイトルを観ただけで、その内容を予感し、手が震える。(また、やってきた)それは貞操具を嵌められて一夜を過ごし、男子トイレで屈辱の放尿をさせられてから1週間が経った日のことだった。あの辱めを受けてから、裕美は気が気でなかったのだが、情報屋と名乗る男からは梨のつぶてだったのだ。
 裕美もあれで全て事が済んだとは思っていなかった。が、下着を脱いでいるように命じられたり、何処かへ独りでゆくことを命じられたりすることは、ばったり止まっていた。何処か何かの犯罪に関与して警察にでも捕まったりしたのではないかと、淡い期待を抱き始めていた頃だった。
 あの日以来、会社内で時々すれ違う美紀にも、言葉に出来ない圧迫を感じていた。
 (美紀が何か知っている訳ではない筈だ)と思おうとしていた。(只単に、郵便物が届けられ、長谷部の忘れ物として鍵を言付かっただけなのだ。)それが裕美にとって一番都合のいい解釈だった。(が、もし実は何もかも知っていての言動だとしたら・・・)そう思うと、恥ずかしさに身が震えた。会社の廊下などですれ違っても、裕美は美紀にまともに顔を合わせられなかった。どうしても下に俯いてしまうのだ。美紀に何か言われる度に、どきりとしてしまう自分を感じていた。

 そんな美紀から、長谷部の予定を訊かれていた。裕美はいつものように手帳を繰りながら答えたのだが、美紀が訊いてきたのは、長谷部が午前中に不在になる日についてだった。美紀は、得意先との会合結果をいち早く報せる必要があり、居る日と居ない日を把握しておきたいと上司の吉村に言われているのでと言っていたが、訊き方に妙なものを感じた。が、美紀には、自分の恥ずかしいものを握られているように無意識に感じてしまい、言われたことには服従しなければならないように感じてしまう裕美だった。
 そんなことがあった後のある朝、そのメールを貰ったのだった。

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