接待9

妄想小説

恥辱秘書






第十二章 忍び寄る脅迫者


 四

 裕美は腕時計を見る。2時3分だった。パニックが裕美を襲う。が、もう考えている余裕はなかった。その後がどんなことになるかも考えることが出来ず、ただ慌てて指示通りにスカートを捲ってパンティを下ろし便器の上に置く。ブラジャーを脱ぐのはちょっと手間取った。制服のベストを脱ぎ捨て、ブラウスの釦を外すが、手が震えていつものように簡単に外れない。上から4つぐらい外れたところで、袖から腕を抜いて焦りながら背中のホックを外す。
 ブラジャーをさっき脱ぎ取ったパンティの上に置くと、釦を掛けながらトイレの個室を出る。体育館の床を再び対角線に外への出口へ向かって走る。誰かに見られないかなど、気にしている余裕もなかった。事務本館に辿り着いた時には2時4分になっていた。2基あるエレベータが、どちらも上の階に行ってしまっている。裕美は階段を走って上がることにした。
 4階を過ぎた時には、もうかなり息が切れていた。が、悲惨な結果になるのが怖く、がくがくする脚を踏ん張って、手摺に捕まりながらなんとか昇っていく。5階のホールに出る曲がり角が見えてきたとき、遠くで電話の呼び出し音が鳴っているのが聞こえてきた。
 幸い、秘書室は誰もいないようだった。空けっ放しになっている秘書室の扉を走り抜けると、自分の席に駆け寄ってひったくるように受話器を取る。
 「も、もしもし・・・。」
 なんとか声をだしながらも、はあ、はあ、息が荒くなってしまう。
 裕美が一声発した途端に、ツーという信号音に変わってしまった。
 (間に合ったのだろうか。自分の声を確認して切ったのだろうか。それとも、・・・約束を破ったと思って切られてしまったのではないだろうか。)
 崩れ落ちるように、椅子に座り込んだ裕美だった。フリルのタイが、未だきちんと留めてなくて、だらしなく胸元にだらりとぶら下がっていることに気づいた。しかし、それをきちんと締める力も残っていない裕美だった。

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