妄想小説
競泳エースに迫る復讐の罠
五
「あ痛てて・・・。ち、畜生。放しやがれっ。」
「そうはいかないわ。他人の家に勝手に忍び込んで只では済まないわよ。すぐに警察に連絡して引き渡してあげるわ。」
「待ちな、麗華。只では済まないのはお前のほうだよ。」
先程タブレットを持って事前に撮った画像を見せていた朱美のほうが麗華に声を掛ける。麗華は悦子を抑え込んだ手を緩めずに顔を朱美の方へあげる。
「これを見てみな。アンタの可愛い部下が今どうなっているかをね。」
(まさか、また美桜を・・・?)
麗華がさきほどふと抱いた一抹の不安は杞憂ではなかった。朱美が再び翳しているタブレットにはその美桜そのものが柱に括り付けられている姿があったのだ。
「おい、そっちに居る吟子っ。その美桜って娘に一発鞭を呉れてやりな。」
タブレットは動画の電話で繋がっているらしかった。
「あいよ。ほれっ、一発当ててやるからいい声で泣いてみな。」
ピシーン。
「あぎゃああ・・・。」

朱美が麗華の方に翳してみせるタブレットの画面には磔にされたまま鞭を打たれて悲鳴を挙げている美桜の姿が映っているのだった。
「み、美桜っ・・・。何するの、貴女たち。やめなさい。やめるのよっ。」
「何だい、その口の利き方は。まだお前の立場が分かっていないようだね。おい、吟子。もう一発鞭を呉れてやりな。」
「ま、待って。・・・・。わ、わかったわ。それ以上、美桜に手出しはしないでっ。」
麗華が惧れていたことが現実になっていることがはっきりわかったのだった。
「ひ、卑怯だわ。貴女たち・・・。」
「やっと状況が掴めたようね。わかったら悦子を抑えつけているその手を放してやんな。」
「うっ・・・。」
抑えつけているスケバンの手を緩めたら、どういう事態になるかは想像に難くない。しかしそれでも麗華にはその手を緩めるしかないのは嫌でもわかっていた。麗華が手を放すと自由になった悦子はそれまでの鬱憤を晴らすかのように麗華の頬を平手で思いっきり張るのだった。

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