妄想小説
競泳エースに迫る復讐の罠
十九
麗華がスケバン達を自宅の競泳練習用のプールまで案内すると、その立派さに悦子もあきれ果てる。
「すっげえなあ。お前んち、どんだけ金持ちなんだ? こんなでかいプールがあるんだったら、最初っからあんな狭いバスタブに浸からせるよりこっちに落としてやるんだったなあ。」
「悦子、そんな事よりこいつを懲らしめるいい方法を思いついたよ。競泳選手らしいいいやり方でね。」
不気味な笑みを浮かべる朱美の表情に麗華は嫌な予感を感じるのだった。
麗華が後ろ手に手錠を掛けられてリビングに戻る途中で朱美は屋敷の外に塀で囲われた池のようなものを見つける。
「あそこにあるあれは何だい?」
「あ、あれは父が帰国した際に使う露天風呂です。」
「何だって? 露天風呂まであるのかい、この家は?」
悦子が呆れて素っ頓狂な声を挙げる。
「ふうん。あそこも使えそうじゃないか。愉しみが増えてきたよ。」
またも不気味な笑みを浮かべて独り言を言う朱美だった。
「ああ、そうだ。そして調教師のジローとトシローに連絡して調教用のザイルと滑車を用意させるんだ。それを持ってこっちへ来させるんだ。お前もそっちの人質を連れて二人と一緒にこっちに合流しな。人質は声を出せないように猿轡と目隠しを嵌めて麻袋にでも詰め込んで二人に車に乗せて貰いな。ああ、それじゃ待ってるよ。」
朱美は人質として捕らえている美桜の居る吟子の元へ電話して調教師の二人と合流して真行寺邸にやって来るように指示をしていた。
「お前も聞こえたろう。もうすぐアタイ等の仲間がお前の後輩の美桜って女を連れて来るんだ。お前がアタイ達の命令を素直に聞くようにね。」
「もう充分貴女達の言う事は聞いてきたわ。これ以上、何をさせようって言うの?」
「まずはあいつ等が到着する前にお前の得意技を披露して貰おうか。お前、競泳選手だっていうぐらいだから水の中で息を止めているのは得意なんだろ?」
「ロングブレスの事かしら? それだったら25mぐらいは出来るわ。」
「おい、悦子。そのロングブレスってやつを披露して貰おうじゃないか。バケツに水を汲んで持って来な。」
「あいよ。さっきの便所に掃除用のバケツがあったからそれに水を汲んでくるよ。」
麗華は朱美と悦子がさせようとしていることに気づいて恐怖におののく。

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