妄想小説
競泳エースに迫る復讐の罠
一
「麗華先輩っ。また少し記録が伸びましたね。」
その日の練習を終えてロッカーに着替えに戻ってきた真行寺麗華に後輩の今泉美桜が声を掛ける。
「ああ、美桜ちゃん。県大会のレースも迫ってきているから。調子は上げていかなくちゃ。そうそう、美桜ちゃんも大分慣れてきたわね。ただ今のブレス法だとちょっとタイムにロスが出てるわ。そうだ。今度うちのプールに練習に来ない? 学校の部活だと個人的には指導しにくいから。」
「え? いいんですか、先輩。自分の家に自分専用の練習プールがあるなんて羨ましいなあってずっと思ってたんです。」
「いつでもいらっしゃいな。ちょうど今、母が海外赴任してる父のところへ出掛けているので家はこのところずっと私独りなの。家のプールでブレスの仕方とか個別指導してあげるわ。」
「是非お願いします、麗華先輩っ。」

西湘高校水泳部のエースである麗華に憧れて水泳部に移った美桜は元々麗華が居た弓道部で麗華から指導を受けていたのだが、麗華が水泳部コーチからその泳ぎっぷりを見込まれて水泳部に移ったのを見て、自分もとそれほど得意ではなかった水泳を同じ水泳部に移ったのだった。

その日は学期末試験も近く、水泳部の練習も休みの日だったので父親も母親も居ない自宅に早目に帰ってきた麗華は制服を着替えもせずに少しは勉強でもしようかと机に向かったところだった。その時に屋敷の門に付けられたインターホンが鳴ったのだった。
ピン・ポーン。
(誰かしら・・・?)
麗華はすぐにリビングの壁にあるインターホンのモニタ画面を開くボタンを押す。

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