悪夢の前夜祭
第三部
八十四
校長の口に菜々子の仮面の端が引っ掛かって仮面が外れてしまう。慌てて顔を背ける菜々子だったがその顔を校長が更に力を篭めて引き寄せる。顔と顔が見合った瞬間、お互いに身体が凍り付くのを感じる。
「お、お前・・・。本当に松下先生じゃないか・・・。」
菜々子の顔からはらりと仮面が落ちていく。気づかれたことにもう隠しようがないことを悟った菜々子は覚悟を決める。
「本当に松下菜々子なのか・・・。」
菜々子はゆっくり頭を縦に振る。
「ま、まさか・・・。」
校長は菜々子の身体を引き離すと、後ろに一歩下がる。
「ど、どういう事なんだ。松下先生。説明したまえっ。」
「どういう事もありません。わたしはこういうことをさせられていたのです。拒むことは許されませんでした。これは全てうちの生徒たちを守る為なのです。」
「生徒を守るだって? こんなことしてて、それこそ許されるとでも思うのか。」
「それは校長だって同じことではありませんか? こんな所に出入りしてることがばれたら、校長だって立場はないのですよ。」
「うっ、そ、それは・・・。」
怒りに震えていたように見えた校長の身体が事態の拙さに気づいたらしくどんどん萎縮していくのが菜々子にもはっきりわかる。股間のものは既に萎えて小さくなってきていた。
「おそらく校長も嵌められたのだと思います。今日の校長の姿は間違いなくビデオに撮られている筈です。そのビデオで校長も脅されて言うことを聞かされることになる筈ですよ。」
「な、何だって・・・。そ、それじゃあ・・・。」
どういう事態なのか漸く掴めてきた校長だったが、既に後の祭りなのだった。
翌日、校長は権藤理事長を自分の校長室に受け入れ、持参された合併承諾書に署名を無理やりさせられたのだった。当初は対等な立場での合併となっていた話が一転して吸収されて傘下に入るという話に変わっており、校長は格下げになって副校長として権藤理事長の部下になることを了承させられたのだった。
こうして多大な寄付による経済力しか強みのなかった東雲学園商業高校が、一躍県内随一の有名進学校のレッテルを手にいれたのだった。
両校の生徒等の間でやり取りされている裏アカウントでは、新制東高に入学すると全男子生徒は西高精鋭の女教師たちによって童貞を卒業させて貰えるという特典が得られるという噂がまことしやかに乱れ飛んでいて、それが東高に一層入学希望者を増やすのに一躍買っているという事態に発展していくのだった。
鬼頭医師は西高、東高を通じた専属の校医に就任しただけではなく、西高の優等生女子たちが次々にその歯牙に掛かって、性の虜に貶められていくのだった。
完
先頭へ