玲子診察室入り

悪夢の前夜祭


 第三部



 六十五

 「あの・・・、カウンセリングを受けるように言われてきた早乙女玲子ですが。」
 玲子は指定された日の朝一番で、かつては放送室だった鬼頭医師用にあつらえられた診察室を訪ねたのだった。
 「君が、早乙女玲子君か。あ、大分緊張しているようだね。さ、まずここに座って。この水をまずいっぱい呑みなさい。心の緊張を解きほぐす薬が入っているのだよ。カウンセリングにはリラックスした気持ちになるのが一番大切なのだ。」
 鬼頭医師は玲子にグラスに並々と注がれた水を飲み干すように命じる。玲子は何も疑うことなく、差し出されたグラスの水を飲み始める。
 「カウンセリングでは幾つか質問をするが、それは君の状態を確認する為のもので、プライバシーに触れるようなものではない。答えたくない設問があったら答えなくていいし、まあそういう質問はない筈だから安心してていい。君が答えるのを私がコンピュータに打ち込んでいくので、後でコンピュータが分析して診断結果を出してくれる。それに従って必要があれば治療法をアドバイスしてくれたり治療薬の処方をしてくれるという仕組みになっているのだよ。あ、全部飲んだね。それじゃあ、奥の部屋のベッドに横になって。」
 鬼頭医師は元はアナウンサ室だった防音の施された奥の部屋に玲子を案内する。部屋の奥に白いシーツが敷かれたベッドがあって、その脇にコンピュータが置かれた机と椅子がある。玲子がそのベッドに横たわると、医師が脇のコンピュータの前に座る。部屋は柔らかな光の間接照明だけになっている。その照明を医師は静かにダイヤルを回して少し暗くしてゆく。

ベッド上の玲子

 「じゃ、ゆっくり深呼吸を十回ほどして。そしたら質問を始めるから。質問は全て『はい』か『いいえ』で答えればいいようになっているからね。」
 医師は玲子がゆっくり十回深呼吸したのを見届けると質問を始める。
 「最近、眠れないことがありますか?」
 「・・・。は、はい。」
 「何か思い出せなかったりすることがありますか?」
 「・・・。はい。」
 一見他愛もない質問が延々と続けられていく。そのうち玲子は瞼が重くなっていくのだが、自分ではそれに気づいていなかった。そして何時の間にか寝息を立てているのだった。
 医師は玲子が寝入ったのを見届けると、眠りの深さを確かめる為に短いスカートから剥き出しの太腿に手を置いてみる。玲子がピクリともしないのを確かめると、診察室の入り口とベッドのある部屋の両方にしっかりとロックを掛ける。それからおもむろに玲子のブラウスのボタンをひとつづつ外してゆき、スカートの横のホックも外してしまう。医師は慣れた手つきで躊躇なく玲子の服を一枚ずつ剥がしてゆく。玲子は最後の一枚であるショーツを脚から抜き取られても身動きひとつせずに深く寝入っているのだった。

高野恭子顔

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