悪夢の前夜祭
第三部
五十五
「そうなんです、校長。この交換授業というシステムは我々、西高にも、お隣の東高にとってもメリットのある仕組みなんです。是非、前向きに検討して頂きたいのです。」
西高の校長室を訪れた松下菜々子は、校長に朱美に言い含められた台詞を力説する。交換授業というのは、西高の教師が東高の生徒に、東高の教師が西高の生徒にお互いに教えあうという交換留学のような仕組みなのだった。違う環境の生徒、先生が普段とは違う形で触れ合うことでより多くの事を学べるというのだった。
菜々子自身はこの交換授業などに全く賛成していない。しかし、朱美にそれを校長に提案するように命じられてしまったのだ。
「で、取り敢えずトライヤルはどの先生にお願いするのかね。」
「最初は言い出した私がやります。私が東高に行って交換授業をまずやって見せます。その反響で徐々に広げていけばいいのではと思います。ですから、校長から東高、東雲学園商業高校の理事長に直接お話頂きたいのです。あらかたの話は事前にしてあります。あとは向こうの理事長の了承を得るだけです。」
「君がそこまで言うのなら、向こうの理事長に話をしてみようじゃないか。」
こうして、菜々子は朱美等の居る東高に赴いて交換授業と称して授業をさせられることになってしまったのだ。
交換授業の実際の采配は朱美等が取り仕切っているらしかった。菜々子は生徒会顧問であると共に、英語の教師をしている。そこで東高で英語の授業をすることになったのだった。
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