美月職員室忍び込み

悪夢の前夜祭


 第三部



 七十七

 もう誰も居なくなった筈の職員室へ忍び込んできたのは如月美月だった。美月の脳裏には、朱美から教えられた言葉がまだ頭にこびりついている。
 (本当の真犯人を知りたかったら、職員室の松下菜々子先生の抽斗の奥を探ってみることね。)
 謎のような微笑みと共にそう言い切る朱美に不審は抱かずにはいれれないものの、同僚の松下菜々子もまた、何かを隠しているという疑いを拭いきれない美月だったのだ。
 (とにかく調べてみるしかないわ。)
 同僚の机の抽斗の中をこっそり覗くなど、許される行為ではないと思いつつも、確かめずにはいられない美月だった。
 (今なら大丈夫そうだわ。)
 逸る気持ちを抑えながら足音を立てないようにゆっくりと菜々子の机を目指す。既に帰ってしまったらしい菜々子の机の上は綺麗に片付いている。
 (抽斗・・・。これね、朱美さんの言っていたのは。)
 もう一度辺りを見回すとすうーっと菜々子の抽斗を引く。奥に何やら茶色の封筒に入ってものが押し込んであるのが見える。それを指で挟んで引っ張りだすと中身を改める。それは以前、東高に交換授業に行かされた時に、男子生徒等に気づかれないように脱ぐことを強要された自分自身のショーツに間違いなかった。
 (わ、わたしのだわ。とすればやはり、あの命令を書いたのは・・・。)
 その時、職員室の入り口から声が響く。
 「如月先生、そんなところで何をなさっている?」
 声の主は松下菜々子だった。
 (うっ。まだ居たのだわ。)
 自分が何をしているのか、松下菜々子にはすっかりばれてしまったのを悟った美月は居直ることにした。
 「先生こそ、どういう事なんですか。私の下着を隠し持っているなんて。」
 「先生の下着ですって? そこに入っているのは私に送り付けられたものよ。」
 「そんな都合のいい嘘はもう信じません。貴方が全ての首謀者でなければ、私の下着がここに隠されているなんて説明がつきませんわ。全ては貴方の仕業なんでしょ? もういい加減に白状なさったら?」
 「白状だなんて、どうして私を犯人扱いなの?」

高野恭子顔

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