玲子眠らせ

悪夢の前夜祭


 第三部



 六十六

 全裸に剥かれた少女の身体はスポーツ選手らしい無駄のない締まった身体つきだが、胸の膨らみには早熟な発達が見られる。少し前に処女を喪ったばかりという陰唇は薄めの陰毛の陰でピンク色の襞をすこしだけ覗かせていた。
 医師はテーブルの抽斗から茶色の小瓶を取り出すと、指を突っ込んで軟膏状のクリームを絡めとるとそれを剥き出しの乳房の乳頭と陰毛に隠れて息づく陰唇の奥へゆっくりと擦り込んでいくのだった。

 玲子は目を覚ますと自分が宙に浮いて彷徨っているような感覚に捉えられているように思われた。目を覚ましたのかどうかさえ、自分にもはっきり分からなかった。視界には何も入って来ず、真っ暗闇の中に居る様だった。目をこすろうとしたが、金縛りにあったようで手も足も自由に動かせないことに気づく。
 手足を大の字に大きく開いているような気がするが、それが自分のものではないように自分の意志では動かせないのだった。
 (これは夢なんだわ。夢の中で金縛りにあっているんだ・・・。)
 その時、これまで自分が殆ど感じたことのないような感覚に捉われていることにも気づく。自分の身体が自分のものでないような感覚なのだ。暫くして、その感覚がある箇所に集中して起こっていることに気づく。それは自分の身体の中心のようだった。自分の身体の内側のようにも感じるし、体皮である外側のようにも感じるが、脚の付け根あたりが熱く感じられるのだった。熱く感じられるのはその場所だけでなく、乳房の中心、乳首の先もそう感じているような気がするのだが、自分の手が動かせないのではっきりしない。痒いようなもどかしいような、どうにかして欲しくて堪らない感覚が乳首と脚の付け根あたりに感じられるのだった。
 その時突然、乳首の先が何かに捉まれた気がした。まるで宙を彷徨っている間に鳥のような獣のようなものに吸い付かれたような感覚だった。嘴で咬まれたというよりも何か柔らかい口のようなものに吸い付かれたような感覚だった。やがて股間にも同じような感覚が起こる。自分が何かに跨っているような、逆に自分に何かに跨られているような感じがしてきた。何かが自分の中に侵入してこようとしているようにも思われ、逆に自分は早く何かに侵入して欲しいと思っているようにも感じられる。やがて、その何か分からないものが小刻みな振動を伝え始めた。その振動が自分の痒みを癒してくれるような心地よいもので、自分の身体はその振動がもっと激しくなることを欲しているようだった。
 (ああ、何・・・。これっ。たまらないわ。もっと・・・。もっと強くっ。)
 玲子は心の中でそう叫んでいた。

高野恭子顔

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