玲子夢想中

悪夢の前夜祭


 第三部



 六十七

 医師は玲子の身体が小刻みに震え始めるのを赤外線暗視カメラでずっと観察していた。玲子は明らかに悶え、喘いでいた。それはしかし苦しんでいるのではなく、愉悦を抑えきれないという感じだった。医師は手元のダイヤルを少しだけ回す。玲子の身体の動きが更に高まる。
 (絶頂が近いようだな。)
 医師が予測して間もなくそれは訪れた。癲癇の患者が発作を起こしたようにも、断末魔の叫びのようにも聞こえたが、そういう類いのものではなく、アクメを迎えた女性ならではの特有の喘ぎ声だった。それを発してすぐに玲子はぐったりとなった。医師はそれを見届けてから今度はかたわらの注射器で麻酔薬を注入していくのだった。
 薬が効いてくるのを暫く待った上で医師は頭から赤外線暗視カメラ付きのゴーグルを外し、部屋の間接照明を医師が見通せる程度に薄暗く点ける。
 乳首に取り付けていた吸盤式のバイブを外し、股間からは濡れそぼったペニス型の張型バイブを抜き取る。更には患者の目を覆っていたアイマスクを外し、両手両足を拘束していた柔らかなシリコンゴム製の枷を外してゆく。
 ぐったりとした身体に元通りに一枚ずつ服を着せていくのは、医師にはもう慣れ切ったいつもの動作だった。脚を抱えて尻を持ち上げショーツを引き上げていく。麻酔で深く眠り込んでいるので少々乱暴な着せ方をしても目を覚ます惧れがないことは長年の経験でよく分かっていた。最後にスカートを足首から通して腰のところまで引き上げるとホックを留めて終了だった。

高野恭子顔

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