狙われた弓道部長 麗華
六
美桜は麗華が最も期待している弓道部員のひとりだった。
「私は子供の頃から祖父に合気道と古武道を教えられてきたの。技だけではなく、その精神もね。武道で相手を捩じ伏せることは必ずその後、反発や復讐心をもたらすものなの。むやみに使ってはならないものなの。あくまでも邪悪な暴力から身を守る為だけに使わなくてはならないものよ。」
「麗華先輩。技だけではなく、その武道の精神も私に授けてくださいませんか。」
「いいわ、美桜さん。でも弓道の方もおろそかにしないでね。」
その頃、すごすごと武道場から戻ってきた朱美たちは腸を煮え繰り返していた。
「何よ、だらしない男たちね。あんな小娘一人に三人で掛かってあの様なの。ほんと、役立たず。」
「朱美、そうは言ってもアイツ、古武道とか合気道とかが使えるんですって。こいつら、武道ではど素人だから無理もないわよ。」
「女の武道に打ち勝てないでどうするの。誰かもっと腕の立つヤツ、いなかったかしら。」
「ねえ、朱美。あれはどうかしら。」
吟子が朱美に耳打ちする。
「え、晶って、あの少林寺拳法をやってた子? でもあの子、男子相手に拳法使って退学になったんじゃなかったっけ。」
「それで今は女子プロレスラー目指してジムで鍛えてるらしいわ。」
「晶に助っ人、頼めるの?」
「まかしといて。今でも裏で繋がりあるんだから。」
朱美は心の中でリベンジの炎が燃え上がるのを感じていた。
(真行寺麗華。待ってなさい。今に思い知らせてやるわ。)
「えいっ。」
「ああ、痛たたっ・・・。ま、参りました。」
麗華は関節技が決まったところですぐに美桜の腕を緩める。
「タイミングは分かった? 貴方がこちらへ踏み込んだ一瞬を捉えて引くの。すると自分の方から技を掛けられるほうに突き進んでしまうのよ。合気道は相手の力を利用して技を掛けるものなの。じゃ、今度は貴方が私に技を掛けてみるのよ。」
「わ、わかりました。でも、私に出来るかしら。」
「大丈夫。すぐには出来なくても何度もやっているうちに身体が覚えてくるから。」
「やってみます。麗華先輩っ。」
美桜は麗華が特訓をしてくれているのを必死に学ぼうとしていた。
「うーむ。まあ、今日はこのくらいまでにしておきましょう。じゃ、今度は弓道の方の練習よ。」
「はい、お願いします。麗華先輩。」
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