狙われた弓道部長 麗華
二十四
「貴方、この間ポンプ所に居た一人よね。」
放課後、弓道の練習に道場へ行く前にスケバン一味の一人を見かけて近づいたのだ。
「何よ。この間の仕返しでもしようと言うの?」
「そうじゃないわ。何故わたしを狙っているの? 訳があるんでしょ?」
「さあね。知らないわ。自分で朱美に訊いてごらん。」
「朱美さん? この事は朱美さんの意図なのね。朱美さんは何処に居るの?」
「いつものダンススタジオ跡じゃないかしら。このところ、ずっとあそこをアジトにしてるからね。」
「わたしをそこへ案内してくれない?」
「アンタが一人で来るって言うんならね。どう?」
「いいわ。わたしが一人で行くっ。」
麗華はもう覚悟を決めていた。
(私一人ならもうどうなってもいい。これ以上周りを巻き込む訳にはゆかないわ。)
それは今ではもう廃墟ビルと言ってもいい古いビルの二階にあった。嘗てはそこにダンスを教えるスタジオがあったらしいが、もうとっくに閉鎖されていた。そのスタジオ跡の奥に朱美は他の二人を従えていた。
「へえ。アンタの方から一人でのこのこやって来たって訳かい?」
「朱美さん。貴方の狙いは私ひとりなんでしょ。もう他の人を巻き込む訳にはいかないわ。貴方は私をどうしたいの?」
「お前を思いっきり貶めてやりたいんだよ。」
「何故、そんな事を・・・?」
「それは言えないね。自分でよおく考えてみるがいいわ。」
「ねえ、だったらもう他の人には手出ししないって約束して。どうしたらそう約束してくれる?」
「そうさねえ。アンタが一日、アタシが言うことを全部聞くって約束するんならアタシも約束してやってもいいけどね。」
「わたしが一日何でも言うことを聞けばいいのね。」
「出来るんならね。」
覚悟は決めてきていたが、さすがにそれにこたえるのは躊躇われた。
(この人は私の処女を奪おうとした。それに失敗したら男の出したオシッコを呑ませようともしたのだ。そんな人の言いなりになるなんて・・・。でも、部員たちを救うにはそうするしかないのだ。)
「わかったわ。約束するわ。だから、貴方も他の人には手出しをしないと約束して。」
「いいだろう。」
(処女なんて奪われたっていい。命まで取ろうとは言わないのだろうから。)
そうして麗華は朱美に一日だけ何でも言うことを聞くと約束したのだった。
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