窓の外火事

狙われた弓道部長 麗華




 二十三

 扉の外に見に行った女が叫んでいる。
 「大変、火事みたいよ。こっちに消防車がいっぱい走って来る。煙が出てるわ。」
 「まずいわ。吟子、悦子、みんな。逃げるわよ。」
 床に寝かされていた麗華を置いて、スケバンたちが一斉に出口の扉に向かって走っていく。外はもうもうと煙が立ち込めている。
 「何なの、これは・・・? とにかく早く逃げるのよ。」
 スケバンたちが散り散りになってポンプ所から公園の方へ逃げていく。そのスケバンたちが出たのを見計らってポンプ所に飛び込んでいったのは美桜だった。
 「麗華先輩っ。間に合ったかしら。」
 すぐに床に寝かされていた麗華を見つけると走り寄る。口に咬まされていたボールギャグを外すとやっと麗華も口が利けるようになる。
 「うっぷっ。た、助かったわ。火事なの?」
 「いいえ、大丈夫。火事じゃないから、安心して。今、縄を解いてあげるから。」
 麗華を後ろ手に縛っていた縄を解いてやると、自分が着ていた長めのパーカーを脱いで裸の麗華に着せる。
 「いったいどういう事?」
 「発煙筒を何本も焚いて火事を装ったの。警察を呼ぼうと思ったんだけど、説明してると長くなるし、だったら火事を装って消防車を呼んだ方が早いと思ったの。案の定、火事だと聞いてすぐに消防車が駆けつけてきたわ。」
 「助かったわ。ありがとう、美桜。」
 「わたしこそ。麗華さんが助けに来てくれなかったら、わたし今頃どうなっていたか。あ、只、消防士の人達が来たら、火事の嘘を吐いたこと、一緒に謝ってくださいね。」
 「勿論よ。」
 二人は手を取り合ってポンプ所の出口へ消防士たちに逢いに向かうのだった。

 麗華は美桜の機転のおかげで危うく難を逃れたのだったが、スケバンたちが諦めたのでないのは明らかだった。美桜の話に依れば、一人のところをスケバンたちに囲まれ無理やり連れ去られたのだと言う。美桜には登下校の際はなるべく一人にならないようにし、自分も出来る限り一緒にいるようにすると言っていたが、そんなことは限りのあることだった。
 護身術を習いたいという美桜にこの前も合気道の技を教えたばかりだったが、美桜が独り立ちして自分で身を護れるようになるにはあと三年は必要だろうと麗華には思われた。スケバンたちが狙っているのは自分であるのは明らかだった。しかし自分を誘き寄せるのに美桜を人質に取るのは容易に考えられるシナリオだった。美桜をこれ以上巻き込む訳にはいかないと麗華は思った。

麗華

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