狙われた弓道部長 麗華
五
仕方なく、麗華も男たち三人に対して構えを取る。スケバンたちは完全に麗華を舐めてかかっていた。助っ人に連れて来られた男たちも全く同様だった。
「おとなしくしな。」
捩じ伏せようと麗華の手首を取ろうとした男の一人が突然宙を舞った。
バシーン。
掴みかかろうとした男は何が起こったのか全く理解できないでいた。自分の身体があっと言う間に畳の床に叩きつけられたのだった。
「ううっ・・・。」
全身の痛みに男は暫く立ち上がることも出来ない。
「畜生。女だてらに変な技、使いやがってっ。」
もう一人の男が麗華に掴み掛かろうとする。が、その男の身体もあっと言う間に宙を舞う。
バシーン。
大きな音と共に男の身体が畳の上に叩きつけられると、麗華はすかさず男の腕を取って捩じり上げる。
「あ痛ててっ・・・。ま、参った。ううっ。は、放してくれっ。」
肩が脱臼するほんの一つ手前で腕を放されたのだが、麗華の膝の蹴りが脇腹に決まって男は悶絶して床に倒れ込む。
もう一人の男は、自分の前に二人の男が一瞬のうちに倒されたのに怖気づいて戦意を完全に喪っていた。腰が抜けたかのように尻もちをついた格好で後ずさりしていた。
「ひ、引き上げるわよ。」
朱美はそう口にするのがやっとだった。もはや手にした竹刀で戦えるとは到底思えなかったからだ。倒れ込んだ男を抱えるようにしてスケバンと男たちが道場を引き上げていくと、何処からともなく下級生たちの拍手が沸き起こった。
「凄いわ、部長っ。」
下級生たちから賞賛と喝采の声が上がる。中でも麗華のことを憧れて入部してきた今泉美桜の拍手の手は大きく響いていた。
(やっぱり麗華先輩は弓道の腕だけではなかったんだわ。私にもあんな武道の技を教えて貰いたいわ。)
憧れの思いを強くして部長の麗華を惚れ直す今泉美桜だった。
「麗華先輩。私も先輩のように強くなりたいです。弓道だけではなく、私にも是非あんな技を使えるように指導してくださいませんか。」
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