狙われた弓道部長 麗華
二
「おや、睦男じゃないの。そんなとこから何、覗き込んでんの。」
武道場の外から空気抜きの小窓をこっそりと覗き込んでいる睦男の姿を見つけた朱美は手下の吟子と悦子を引き連れて睦男に静かに近づいていったのだった。
急に後ろから声を掛けられて、ぎくりとして跳びあがった睦男は学校内の不良女子グループのスケバン格である如月朱美であるのを知って、二度びっくりする。
「な、な、な・・・、何でもありません。別に覗いていた訳じゃ・・・。」
「嘘を吐くんじゃないよ。今まで中をじっと覗き込んでたじゃないか。ふん、どうせ運動部女子の姿を覗き込んでオナニーのおかずにでもしてたんだろ。」
「や、や、や・・・。決してそんなんじゃ。」
「だったら、何を覗き込んでいたのさ。」
「そ、そのう・・・。」
咄嗟に問い詰められて睦男は言い訳を考える。
「あの・・・、実はさっき氷川のアニイがここの部長に声掛けてるのを観ちゃって。どんな相手なのか気になって見に来ただけなんです。」
「ここの部長? どいつだ、そいつは。」
「し、真行寺・・・、真行寺麗華っていう弓道部の主将で部長をやってる子です。」
「真行寺麗華だって? 何だって裕也がそんな奴に声掛けたんだ?」
「い、いや・・・。その・・・。付き合ってくれないかって言ってたみたいです。」
「何だって? んな訳ないだろ。裕也の恋人はアタシだよ。」
「あ、でも・・・。見たんです。でも、大丈夫ですよ。アニキは振られてたみたいですから。」
「え、裕也を振ったヤツが居るだって? 本当なんだろうな。」
咄嗟に睦男は不味い事を言ってしまったことに気づき何とか誤魔化そうと考えるがうまい言い訳が思いつかない。
「ちょっとどいてみな。どんな奴なんだ、その麗華ってのは。」
朱美が睦男を押しのけるようにしてさっきまで睦男が覗き込んでいた小窓に顔を当てる。
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