狙われた弓道部長 麗華
十四
その日の夕方、朱美は裕也を自分の家の部屋に呼び込んでいた。
「ねえ、裕也。アンタ、真行寺麗華とかっていうヤツと付き合ったりはしてないわよね。」
「真行寺・・・、麗華?」
朱美のベッドに寝そべっていた裕也は、朱美の口から突然その名が出て内心狼狽えるのを顔では誤魔化していた。
「知ってるのか、そいつ?」
「知ってるってほどじゃないけど。変な噂流してるヤツが居てさ。」
「噂? 俺は別に真行寺なんてヤツとは付き合ってねえぜ。」
裕也は嘘にならない微妙な言い方をする。
「ね、裕也。今日、親たちは親戚の家に行ってて帰ってこないの。」
朱美は意味ありげな言い方で自分の机の抽斗から何やら取り出す。
「何、口に咥えてんだよ?」
朱美は抽斗から出したコンドームの包みを咥えたまま裕也が寝そべっているベッドの隣に座り込み、膝をわざと高く持ち上げる。
「これ、要るでしょ?」
口に咥えたものを裕也の腹の上にポトリと落とすとそのまま裕也の上に跨るようにのしかかる。
「裕也はわたしだけのものよね。」
そう言うと、朱美は裕也に被いかぶさるようにして唇を合わせるのだった。
「ねえ、裕也。わたし今、パンティ穿いてないの。」
わざと裕也をその気にさせようとして、そんな言葉で誘いながら跨った裕也の股間をズボンの上から後ろ手に探ってみる。そこはズボンの上からでもはっきりと硬くなってきているのが分かる。
「朱美。お前、処女なんだよな。」
突然言われた言葉に朱美は一瞬狼狽える。
(処女かどうかを裕也は気にしてるんだ。)
朱美は実はもう処女は喪失していた。あまり好きな男子ではなかった男に、処女であるのが周りから馬鹿にされそうで、早々に捧げていたのだった。
「勿論、処女よ。裕也に捧げる為に取ってあるの。」
咄嗟に朱美は嘘を吐いた。しかし裕也から吐かれた言葉は朱美には意外なものだった。
「処女はもっと大切に取っておけよ。」
(え・・・?)
思いがけない言葉に朱美は二の句が継げなかったのだった。
(まさか、あの純心で清純そうな見掛けの真行寺麗華に憧れているんじゃないでしょうね。だったらアイツの処女を踏みにじって裕也に教えてやるまでだわ。)
裕也から自分のことを押し倒して貰えそうもないのを察して、朱美は密かにそう決心したのだった。
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