沙季

妄想小説

罠に嵌るチア女子 蘭子



 五

 女たちの中に居た中で一番のリーダー格だったらしい河田沙季が適確に指示を飛ばすと、女たちはハッと我に返ったかのように蘭子に対し目配せで合図し始める。
 女だてらに喧嘩だけは滅法強い蘭子だったが、さすがに四、五人にまとめて飛び付かれると敵う筈もなかった。あっと言う間に両腕を取られて抑え込まれてしまう。
 「誰か縄を持っておいで。抵抗出来ないように縛り付けてしまうのよ。」
 縄と聞いて、さすがの蘭子も蒼くなる。
 (ま、まずいわ。)
 「おい、お前等。何してんだ。ここは男子トイレだぞ。お前等女が男子トイレの中で何してやがんだ。」
 後方から聞こえてくた野太い声は蘭子にも聞き覚えのあるものだった。
 「その声は、バスケ部の三浦さんね。」
 声の方に無理返った蘭子が声の主の方に呼びかける。
 「ここに居る連中が、ウチの麗子が貴方に色仕掛けで挑発したっていうのだけれど、本当なの?」
 「は? んな訳ねえだろ。こんなガキみたいな女にパンツ見せられたぐらいでそそられるかよ。」
 「み、三浦・・・さん。そんな事、言ったって・・・。」
 「ねえ、アンタたち。本人の三浦さんがそう言ってるのよ。もう放しなさいよ。」
 自分の両腕を振り払った蘭子が麗子の方に走り寄っていってモップの柄を持って押さえつけていた女たちを押しのける。
 「麗子っ。行くわよ。どきなさいよ、あなたたち。」
 蘭子は麗子の肩を抱くようにして抱え起こすと濡れそぼった雫が自分にも掛かるのも厭わずに男子トイレの出口の方を目指す。美桜たちが助っ人にやってきたのもちょうど同時だった。
 「蘭子、麗子っ。大丈夫なのっ?」
 「ああ、美桜。こっちは無事よ。さ、みんな帰るわよ。」
 蘭子の鋭い視線にひるむように後ずさりしていく東高の女子たちを追い払うようにして麗子を挟むように両側から抱いた蘭子と美桜たちが西高のほうへ帰ってゆくのだった。

蘭子

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