蘭子と裕也

妄想小説

罠に嵌るチア女子 蘭子



 十二

 同じ頃、蘭子は裕也を誘って夕陽が見える丘の上に来ていた。小さい頃から二人で何度も遊びに来た馴染の場所だ。しかし最近はもう二人だけで来ることは何時の間にかなくなっていた。最後に二人でここへ来たのも何時だったか蘭子には思い出せないほどだった。
 一旦は中止にされた東高との今シーズン最後のバスケの試合が解禁になったという報せを告げに裕也の元に駆け付けた蘭子を、珍しく裕也の方が誘ったのだった。 

 「本当に良かったね、試合が出来るようになって。」
 「ああ、この為にずっと頑張ってきたようなもんだからな。今シーズンの完全制覇が掛かっているし、何て言っても高校バスケの最後の試合だからな。」
 「そうよね。ねえ、裕也。今度の試合、わたしの為にも絶対勝ってね。」
 「お前の為? そうだな。この三年間、蘭子がずっと応援してくれたんだものな。チア部まで作っちゃってさ。」
 「そうよ。あのチア部は裕也の応援の為に作ったものだもの。だからこそ、最後まで勝って貰わなくっちゃ。わたしと私たちのチア部の為にね。」
 そう言って裕也のほうを見上げる蘭子に、裕也は両肩を抱いて引き寄せる。蘭子と裕也の視線が合わさる。蘭子の肩に掛けた裕也の手に力がこもる。

ハグ

 「待って、裕也。・・・。試合に勝ってからにして欲しいの。それは試合に勝った裕也へのご褒美にしたいから。」
 裕也は蘭子の言葉の意味を理解して手の力を緩める。
 「ね、手を繋いで帰りましょうよ。」
 そう言って、蘭子は裕也の手を取って坂道を下り始める。蘭子は、もうこの手を決して離さないとばかりに裕也と繋いで掌にぎゅっと力を篭めるのだった。

蘭子

  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る