妄想小説
罠に嵌るチア女子 蘭子
二十七
「あ、来てくれたんだ。」
夕暮れ時の公園の丘の上の東屋で一人待っていた沙季は、手紙で呼び出したバスケ部キャプテンの三浦が現れたことに正直驚いていた。
「なんだよ、呼び出しといて。」
「だって、来て呉れるなんて思いもしなかったから。」
「部活も終わっちゃったし、他にすることもないからな。」
「最後の試合、西高に勝てて良かったわね。」
「ああ、あれか・・・。何かちょっと釈然としないんだがな、あの勝ち方。」
「ふうん、そうなの? でも勝ちは勝ちじゃない。ま、それはいいとして前から訊きたかったんだけど本当にお嬢、いや虹子とは付き合ってないの?」
「ああ、アイツが勝手にそう言いふらしていただけだよ。」
「そうなの。虹子も彼氏じゃないって言ってたわ、あなたの事。」
「少なくとも俺は好きって訳じゃないな。まあ、やらしては貰ったけど。」
「本当にやったの、彼女と。」
「別にいいじゃないか、そんな事。」
「ねえ、だったら私とも出来る?」
「え、何がさ?」
「わたし、本当は貴方の事が好きだったの。でも虹子が彼氏だって言うから言い出せなかった・・・。」
沙季は意を決して一歩、翔平の方に歩み寄る。さり気なく翔平の腰に手を廻すと目を瞑って唇を突き出す。
「ねえ、キスして。」
沙季は肩を抱かれるのを感じとった。柔らかい感触を唇に感じる。
「もっと早く告白すればよかった。虹子が貴方の事を好きじゃないんだってもっと早く知ってれば・・・。」
「虹子の事がそんなに気になるのか?」
「そうよ。だって彼女は東高のボスだもの。彼女に逆らったらとんでもない目に遭うわ。」
「虹子の祖父だっていう東雲学園の理事長の事を心配してんだろ。実はウチの親父、新聞記者をしてて、親父の話ではあの理事長が近々贈収賄で掴まるらしいぜ。だからもう、虹子のことはあまり気にすんな。」
「そんな事言ったって、今は絶対的な権力を持っているのよ。それにあの蘭子だって。」
「蘭子? あの西高のチア部の部長だろ。その蘭子がどうしたって?」
「虹子は誰でも人気のある女子が憎いのよ。だからとことん虐めようとするの。虹子はバスケの試合で彼女と賭けをして勝ったんで、いう事を聞かせることが出来るのよ。」
「それで試合の後、あんな事を言ってたのか。」
「バスケ部の部員にフェラチオさせるって話でしょ。でも失敗して。今度は蛭田ってストーカー野郎の小便を呑ませようとしたの。それもぎりぎりで邪魔が入って。」
「そんな事までしてるのか、虹子は?」
「そうよ。それも失敗したから今度は明日の予餞会で恥を掻かせるんだって。チアの大技をノーパンでやらせるんですって。蘭子は断れないからきっとやるわよ。」
「へえ、そんな事、考えてたのか。」
翔平は沙季から虹子の事を逸らそうとするかのように、再び沙季の唇に自分のをあてがうのだった。
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