妄想小説
罠に嵌るチア女子 蘭子
二十八
西高体育館に集められた西高、東高両校の生徒たちによる予餞会が終盤に向けて熱気を帯びてきているのは、照明の効果を上げる為に締め切られた二階席窓の暗幕のせいだけでもなかった。
東高の主に下級生等によるチア部の演技は西高のそれに比べて練習不足もあって稚拙な感じは否めないものの、若さゆえの活気に溢れた華やかなものではあった。それが終わるといよいよオオトリの蘭子たち西高チア部による模範演技で、皆の期待度も注目もいやがおうでも増してきているのだった。
「いよいよ次ね。そろそろ出番よ。」
「わたし、ちょっとお化粧直してくるからね。」
麗子が声を掛けてきたのに、蘭子はそう言ってそっと一人席を立って女子トイレに向かう。お化粧直しと言ったが、蘭子にはひとつ準備しておくことがあったのだ。
女子トイレに向かいながら蘭子は昨日の夕方、東高の虹子と交わした会話の事を思い返していた。
虹子が沙季を通じて伝言で伝えてきたのは、東高体育館用具庫への呼出しだった。伝言の手紙には『独りで待っているので独りで来て欲しい』とあった。蘭子にはそれが何か予感させるものがあったので、美桜や麗子には内緒で気づかれないように独りで向かったのだった。
「昨日は余計な邪魔が途中で入ったからまだ終わってないわよね。」
用具庫に入って扉を閉めるなり切り出してきたのは虹子の方だった。賭けでした約束の事を言っているのだと蘭子はすぐに悟る。
「賭けに負けたのだから約束はちゃんと守って貰うわよ。」
「また誰か連れてきているの?」
昨日されそうになった事を思い出して蘭子はそう口にする。
「いいえ。誰かにやらせると悉く邪魔が入るので、今度は貴方だけにさせる事にしたわ。」
「私にさせる? 何をさせようというの?」
「あなた、明日予餞会で模範演技をやるそうね。競技会用に練習したっていうトウタッチバスケットトスをやるって聞いているわよ。噂でだけどね。」
「そのつもりよ。それが何か・・・?」
蘭子は嫌な予感に駆られる。
「チア部としての最後の演技って訳ね。あなたには有終の美ってやつで飾ってもらうわよ。」
「有終の美・・・ですって? どういう意味?」
「あなたにはあの技をアンスコもショーツも無しでやって貰うわ。」
「え、何ですって? あの技がどういうものか知ってていってるの?」
「勿論よ。だからこそよ。それだけじゃないわ。あそこの毛も全部剃りあげてやるのよ。」
「何ですって? そ、そんな事・・・出来ないわ。」
「あら、出来ないですって? 何でもするって約束じゃなかった?」
「そ、それは・・・。」
「蛭田好男から小便を呑まされるほうがマシだった? それなら全校生徒の前でそれをさせてもいいわよ。どう?」
「うっ・・・。」
虹子ならそれをさせかねないと蘭子は思った。
「あんたの仲間が何をされたかようく思い出すがいいわ。あの子らは男子バスケ部のチンポを咥えてザーメンまで呑み込んだのよ。部長のアンタがそんな事も出来ないって断るつもり?」
「・・・・。わ、わかったわ。あそこの毛を剃ってノーパンで演技をすればいいのね。それでもう約束は果たしたって事でいいのね。」
「ものわかりがいいじゃない。これなら誰にも邪魔されないでしょうからね。だから演技の本番までこの事は誰にも話しては駄目よ。こっそり演技の直前にアンスコとショーツを脱いで来るの。勿論、あそこの毛は前日に剃り落しておくんだけどね。」
「いいわ。それで気が済むならやるわ。」
そう虹子の前では言い切ったものの、昨晩自分の毛を剃り落す時にはつい涙が零れてしまった。自分の生まれた時のままのあの部分を最後の演技で西高、東高の全校生徒が居る前で晒さねばならないのだ。一瞬の事とは言え、皆の脳裏にずっと焼きつくだろう。そればかりか写真部や放送部が撮影しないとも限らないのだ。
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