タイムアウト

妄想小説

罠に嵌るチア女子 蘭子



 三十二

 「あ、あいつ・・・。余計な事を・・・。」
 「だから氷川の打ったブザービートは成立してたんだ。西高バスケ部が試合に勝っていて、蘭子さんは虹子の命令なんて聞く必要はなかったって事さ。」
 「予餞会で蘭子の股間を晒し者にするのを邪魔したのもアンタ、翔平の仕業ね。」
 「ああ、事前に蘭子がノーパンで演技させられることになるって沙季から聞いたんでね。俺がこいつ、好男に命じて照明を落とさせたんだ。こいつ、蘭子に小便を呑ませようとしたことを悔いて俺に蘭子を救う為に何かさせてくれって言ってきたんでね。」
 「沙季があんたにあの計画をばらしたって言うのね。」
 「そうよ、わたしが翔平クンに話したのよ、虹子。」
 用具室の物陰からビデオカメラを手にした沙季が出て来た。
 「そもそもあの賭けをやることになった野球部の喫煙事件は、私が虹子に命令されて野球部の連中を唆したうえで通報したのよ。全て虹子が最初から仕組んだことだったの。」
 「沙季、アンタ・・・。アンタまで私を裏切るのね。」
 「もう私は虹子、あんたの子分なんかじゃないわ。」
 「もう終わりだよ、虹子。お前がやりたい放題だった東雲学園はもう無くなったんだよ。」
 翔平が冷たく虹子に告げるのを聞いて、虹子は頭を抱えて用具室から走り出していた。その背後で遠くからパトカーのサイレンが近寄ってくるのが聞こえてきた。
 「理事長の逮捕もそろそろ始まるみたいだな。」
 「もう全て終わるのね、翔平。」
 いつしか沙季も三浦翔平の元に寄り添うようにしていた。それは氷川裕也が蘭子の肩を優しく抱いているのをみたせいかもしれなかった。

 「ねえ、今度予餞会で一番の見せ場を披露出来なかったトウタッチバスケットトスの大技をグランドで全校生徒を集めてやり直さない?」
 「蘭子、どうしてもみんなにあれを魅せたいのね。」
 「そうよ。わたし、サービスしてアンスコは無しでやっちゃおうかしら。」
 「きゃっ。エロいわ、それ。でも、ノーパンは駄目よ。」
 「いやだあ。馬鹿ねえ。」
 解散を間近にした西高チア部の仲良し三人組の明るい嬌声がグランドに響いているのだった。

大技披露

 完

蘭子

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