妄想小説
罠に嵌るチア女子 蘭子
三十一
「ねえ、虹子。何もそこまでしなくてもいいんじゃない。いい加減で蘭子の事、赦してやったら。」
「何よ、赦すって。冗談じゃないわ。あの女、とことん口惜しい思いをさせてやらなきゃ、わたしの腹の虫が治まらないわ。それから沙季。アンタ、この頃わたしの事、虹子、虹子って気安くない?」
「あら、そうかしら、にじ・・・。あっ、お嬢。」
「まあ、別にいいわ。それより見つからないように上手く隠れてばっちりビデオに撮るのよ。」
虹子は沙季に体育館用具室の奥に隠れてこっそりビデオ撮影をするように命じていたのだった。
そこへ現れたのは虹子に呼出しを受けた西高バスケ部キャプテンの氷川裕也だった。
「何だい、急に呼び出したりして。俺に何か用か?」
「バスケの最終試合も終わっちゃって暇そうだからね。いい事、教えてあげようと思ってね。」
「いい事? どうせ碌なことじゃなさそうだな。」
「ふん、どうかしらね。あんた、チア部の蘭子とは幼馴染だそうね。」
「蘭子か・・・。そうだけど、それが何だ?」
「実はわたし、蘭子と賭けをしたの。この前のバスケの試合、どっちが勝つかよ。」
「賭け? 何だって蘭子のやつ、お前なんかと賭けなんかしたっていうんだ。」
「野球部の喫煙事件で最終試合は一旦中止になったでしょ。それで蘭子が落ち込んでるから、賭けに乗るなら試合禁止令はわたしがおじいちゃんに口添えして撤回させてあげるわよって持掛けたの。」
「それで蘭子は試合が出来るようにお前との賭けに乗ったって言うのか・・・。」
「そうよ。そしたら見事にアンタ達が敗けたんで、蘭子はわたしの言うことを聞かなきゃならなくなったって訳。わたし、蘭子に何でも命令出来るのよ。」
「蘭子に何をさせようって言うんだ。」
「そうね。いろいろ考えたんだけど、蛭田好男ってストーカーみたいに蘭子の事、追い回してる奴が居るから、そいつがオシッコするのを口を開けて呑めって・・・。」
「そんな酷いことをさせるのか。」
「まだどうしようかなって考えてるとこよ。」
「そんな事はやめろっ。試合の勝ち負けと蘭子は関係ないっ。」
「あら、それはわたしと蘭子の間の賭けだから、あんたこそ関係ないわ。でも、蘭子が酷い目に遭うって分ったら随分いきり立ってるわね。」
「当り前だろ。そんな酷いこと、許しておくわけにはいかないっ。」
「だったら方法はあるわよ。蘭子を助けてやる方法がね。」
「な、何だ、それは・・・。」
「あんたが今、ここでズボンとパンツを降ろして、私にフェラチオさせるの。」
「フェラチオだって? 何だってそんな事・・・。」
「フェラチオされてザーメンを私の口の中にだせたら私にキスするの。それが出来たら蘭子の事は赦してやるわ。」
「お前、本気か? 何だってそんな事がしたいんだ。」
「蘭子に口惜しい思いをさせる為よ。だって蘭子はあんたに惚れてるみたいだからね。」
「本当にそれで蘭子との賭けはチャラにするんだな。」
「するわよ。本当にあんたがフェラチオさせてくれたらね。」
「・・・・。わかった。いいだろう。好きにすれば。」
裕也はそう言うと自分のズボンのベルトを緩める。
「ふふふ。これで裕也はわたしのものよ、蘭子。」
そう言うと、ズボンを下ろそうとする裕也の前に虹子はしゃがみこむのだった。
その時、ガシャーンという音と共に用具庫の扉が大きく開かれ、蘭子本人が飛び込んできたのだ。蘭子の後ろには三浦翔平と蛭田好男までを従えていた。
「駄目よ、裕也。そんな事をしては。」
「な、何よ。蘭子、どういうつもり・・・?」
「なあ、虹子。もう終わりだ。賭けは無効だって分っちゃったんだからな。」
後ろから虹子に声を掛けたのは三浦翔平だった。
「どうも変だなと思ったから審判をやってた生徒会長の東尾を問い詰めたんだ。ほら、この写真を観てみろ。氷川が最後のシュートを放ったあのビデオ判定をやった時のコピーだよ。確かに氷川がシュートを打ったのはホイッスルが鳴った直後だったけど、ほら、この写真の背景に映ってる審判時計を見てみろよ。まだ、30秒残ってる。東尾に問い詰めたら虹子、お前にインカムで指示されて早目にホイッスルを吹いたって白状したのさ。」
次へ 先頭へ