妄想小説
罠に嵌るチア女子 蘭子
二十一
蘭子ひとりだけがまだパンティを穿いていることを皆も理解していた。ノーパンのスコートの奥を写真に撮られるぐらいなら、パンティ姿を撮られるほうがまだましと思ったのだ。
「行くわよ。」
蘭子が意を決して渡り廊下へ走り出る。
「お、来たぞ。西高チア部の蘭子だ。みんな、腰を屈めて下からスカートの中、しっかり撮れよ。」
写真部の部長が掛け声をかけると、カメラを持った部員たちが一斉に構える。
「お、白いパンティだ。早くシャッター切れ。おい、逃げてくぞ。追っ掛けろ。」
写真部の連中が階下からストロボを焚きながら追掛けてくるのを蘭子は必死で走り抜けたのだった。
睦男はさっき見たばかりの腕時計をもう一度確かめてみる。
(まだ6時45分か。)
さっきからまだ5分も経っていない。早く校内に忍び込みたいのだが、あまりに早くから校内に入って万が一警備員に見つかりでもしたら元も子もない。だから約束の7時にはぎりぎりで入るしかないと心に決めていたのだ。
バスケの試合が終わって仲間と西高の方へ戻る際に何気なく皆から離れてぐずぐずしていた。試合の途中から沙季との逢瀬のことが気になってしかたなかったのだ。試合は睦男のせいで敗けたと言われてもしかたないものだった。しかし当の睦男の頭は試合のことより沙季との事ばかり考えていて、敗因が自分にあったかどうかなど気にもしていなかった。
皆から少し遅れるようにして歩いていると後ろから声を掛けられたのだ。以前に沙季からの手紙を言付かっていた同じ東高の女子三人組だった。
「沙季がこれを渡してくれって。いいわね、モテる男は・・・。」
そう言いながら丁寧に四つに折った紙切れを渡すと逃げるように去って行く。睦男は自分の事を誰か見ていないかキョロキョロ見回してからそっと校舎の物陰に隠れて渡された手紙を開いてみる。
『今晩七時、あの時の場所で サキ』
それだけ書かれていたのだ。
睦男は部室へは戻らず一目散に家に帰って風呂に入り念入りに身体を洗う。試合の後はロッカールームに付属しているシャワー室で汗を流すのだが、それでは足りない気がしたのだ。髭もいつもより念入りに剃り上げるとローションを丹念に塗っておく。それから今度はこれでもかといわんばかりに念入りに歯を磨く。
こざっぱりしたシャツに着替えたが、もし万が一警備員か誰かに見つかった時に(トレーニングの為ランニングに来ました)と嘘が吐けるように運動用のトランクスとジャージに着替え直す。
母親が「また出掛けるの?」と声を掛けてきたが「ああ、そう。」と曖昧にだけ答えて早目に家を出たのだった。
時計が7時6分前を指す。
(もういいだろう。)
睦男は遅刻などの時に擦り抜ける通用門脇の生垣が少し崩れたところを擦り抜けるようにして校内に滑り込む。一旦西高のグランドを抜けて東高との境にあるほぼ公認になっている両校間の抜け道を通って東高体育館を目指すつもりだった。
体育館から裏手の狭い路地に入る角で頭だけ覗かせてみる。その路地に人影はなかった。もう一度腕時計を確かめると、7時1分前だった。試合前の日に沙季と言葉を交わした辺りまでゆっくりと歩を進める。沙季はまだ来ていないようだった。
(この辺りだったかな)と薄暗がりの中で目を凝らすと白く光るものが地面に見えた。近づいてみると白い封筒だった。裏に小さなハートのマークで封がしてある。睦男は心臓が高鳴るのを感じた。丁寧に少しずつ剥していくと中から一枚の手紙が出て来た。
『体育館の用具室で。パンツを脱いで待ってるので貴方も脱いで来て。』
睦男は思わず生唾を呑み込む。初キスを経験出来るのだと思っていた。しかし手紙にあったのはそれ以上のことを期待させるものだった。
(処女を・・・くれるってこと・・・なんだ)
睦男は試合の時に、何度か沙季がスカートの裾を持ち上げていたのを思い出していた。
(そういう意味だったのか。)
睦男の妄想はどんどん膨らんでいく。それと共にジャージの下のトランクスの中では別のモノが膨らみ始めていた。
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