妄想小説
罠に嵌るチア女子 蘭子
三
翌日、朝練に出ようと早目に登校してきた麗子を西高通用門前で数人の女子学生達が取り囲んだ。東高のチア部の数人だが、実際には東高きっての不良女子グループ達だ。その頂点には東雲学園の実質オーナーである真行寺グループの理事長、真行寺善五郎の孫娘、真行寺虹子が居て東高チア部の部長の仮面の元、東高の女番長を張っている。その朝、麗子を取り囲んだのは、女番長・虹子の親衛隊を名乗る取り巻きの連中だった。
「あんた、西高の桜井麗子よね。ちょっと顔を貸して貰うわ。」
不良グループたちは麗子が逃げれないように周りから取り囲むと、麗子の左右の袖を掴む。
「な、何するの。私をどうしようっていうの?」
抗おうとする麗子に隙を与えずに女達は麗子を引っ張って行く。朝早くなので、麗子が引っ張り込まれた西高のグランドには人影はまばらだ。女たちは麗子をしょっぴくかのように有無を言わせず牽いて行くと、西高のグランドを突っ切って西高、東高の境目になっている灌木の生垣に一箇所行き来が出来るように開いている樹の陰の間を擦り抜けて麗子を東高の体育館の裏側へ引っ張って行く。
麗子が連れてこられたのは体育館の脇に立つ男子用と外トイレの中だった。
「こ、ここは男子トイレじゃないの。何だってこんなところへ私を・・・。」
麗子を引っ張り込むと、女たちは乱暴に麗子の手を引いてトイレの床に引き摺り倒す。
「や、やめて・・・。何するの?」
「ふん、お前にちょっとヤキを入れてやるのさ。お前。昨日、ウチのバスケ部キャプテンに色目を使って誘惑してたよな。」
「え、何を言ってるの?」
「しらばっくれるんじゃないよ。道端で脚を広げてしゃがんでパンツを覗かせて気を惹こうとしてただろ。証拠の写真だってあるんだよ。」
そう言って女の一人がスマホの画面を床に蹲る麗子に翳してみせる。そこには確かに東高バスケ部キャプテンの三浦の前で膝を立ててしゃがみこんでいる麗子の姿が映っている。三浦に脚を広げてスカートの裾の中を覗かせているように見えなくもないが、明らかにそれは曲解というものだった。
「ち、違うわ。それはアンタたち、東高の生徒に引き倒された時のものよ。」
「ふん、適当な事言ってんじゃないよ。この三浦様は私達のお嬢、虹子様のボーイフレンドだって事は知らない筈はないわよね。他人の彼氏をかどわかそうなんていい度胸だわね。そんな泥棒猫みたいな前をするとどんな目に遭うのかよおく思い知るがいいわ。さ、やるのよ。」
女の一人がいきなり麗子の髪を掴むとトイレの床にねじ伏せる。それを合図のように後ろに立っていた女達がそれぞれ手にしていたトイレ掃除用のモップを麗子の首根っこに当てて抑え込む。
「や、やめてっ。放してっ・・・。」
バシャーン。
大きな水音と共に、麗子の顔面に後ろから掃除用のバケツに張った水が浴びせかけられる。
「ふふふ。いい気味よ。汚れたアンタの心と一緒に、このトイレのモップで綺麗にしてあげるわ。さ、みんなやるのよ。」
「ひ、酷いわ。あんまりよ。わたし、三浦なんて人、話した事もないし、誘惑だなんて・・・。」
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