妄想小説
罠に嵌るチア女子 蘭子
一
「レッツ・ゴー、レッツ・ゴー、ニ・シ・コーッ!」
「レッツ・・・。あ、ちょっと待って。ねえ、蘭子。またアイツ、カメラで狙ってる。」
「えっ、美桜。どうしたの?」
チアリーディングの掛け声を途中で止めた美桜に、蘭子も手を停めて振り向く。
「ほら、例のキモいアイツ。また、あんたの事をカメラで狙ってるのよ。あの茂みの奥。」
「えっ、何処? ああ、あれっ・・・。」
親友に注意されて、美桜が指差すほうを振り向くと、蘭子は東高(トウ・コー)との間を隔てるフェンス沿いの生垣に目を凝らす。確かに誰かがカメラを構えて茂みの向こうから覗きこんでいる。
東高というのは、蘭子たちが通う西湘高校、通称西高(ニシ・コー)と灌木の茂みを隔てて隣接する私立東雲(しののめ)学園のことだ。
「あいつ、いつも蘭子ばかり狙っているのよ。しかもシャッターを押すのはターンした瞬間とかジャンプで着地する瞬間ばっかり。」
「え、どういう事?」
「あら、鈍いわね。スカートが翻る瞬間ばかり狙ってるって事よ。」
「きやっ、嫌っ。そうなの?」
慌てて蘭子は短いユニフォームのスコートの裾を押さえる。
「今頃押さえたって手遅れよ。あんたのパンツ、完全に撮られちゃってるわよ。」
「え、でも。アンスコはちゃっと穿いているから。」
「あんたのアンスコって、ショーツタイプでしょ。それだとパンツに見えるから、アイツらの好みなのよ。」
「好みって?」
「それでもパンティに見えるから抜けるって事よ。」
「抜けるっ?」
「馬鹿ねえ。オナニーで射精出来るってことよ。」
「え、いやだあ。私のアンスコが映った写真見て、オナニーしてるっていうの?」
「専らの噂よ。アイツったら、その写真も売ったりしてて、結構高い値段で売り捌いてるって話もあるわ。」
「そ、そんなあ・・・。」
「だから、前から言ってるでしょ。アンスコはアタシみたいに短パン型にしたほうがいいわよ。短パン型だと、覗いても興ざめなんですって。オナニーしてても立たないらしいよ。」
「え、でも・・・。短パン型は嫌なの。だって・・・。」
「凄っくダサく見えるからでしょ。分るわ。でもようは覗かせなきゃいいのよ。」
「え、そんな事、出来るの?」
「わたし、鏡の前でいつも練習してるもの。ターンの時、どれくらいまでだったらぎりぎりパンツが見えないで済むかって。見えそうでみえないぎりぎりで回るのがコツなの。わたしだって、短パン型のアンスコ穿いてるってバレちゃうのは嫌だものね。」
「ねえねえ、あなたたち。何、話してるの?」
チアリーディングの練習の手を止めてひそひそ話をしていた蘭子と美桜に、同じく親友仲間の麗子が加わって来る。
「例の東高のキモイカメラ小僧がまたパンチラを狙ってカメラを構えてるのよ。麗子、アンタもパンツ、撮られないように注意しなさいよ。アンタのアンスコはどんなの穿いてるんだっけ。」
「今日はアンスコの上に更に短パンも穿いているわ。だって見られたくないもん。」
「じゃ、そうとうダサい格好ね。そんな恥ずかしい格好も撮られないようにね。」
「ああ、麗子はいちどアンスコ忘れた日にショーツが覗いているとこ撮られちゃって、写真廻されて泣いてたわよね。」
「ああ、美桜ったら。嫌。またその話。」
「あん時、蘭子が写真取り返してくれなかったら未だにあの写真でオナニーされてるわよ。」
「やめてっ。その話はもうしないで。」
「美桜、いいじゃないの。あの写真はわたしがちゃんと取り返して破いちゃったんだから。」
「ああ、だからグランドでチアの練習するの、嫌なんだから。」
「しょうがないわよ。体育館はバスケ部が最終試合に向けて練習中なんだから。」
「だからせめて外で練習する時はジャージでいいじゃないの。」
「駄目よ。もう、本番間近なんだから。正規のユニフォームでちゃんと練習しとかなくちゃ。私達ももう時間がないのよ。今度のバスケの試合がチアの最後の出番になるんだから。」
チア部の部長である蘭子は、そう窘めるのだった。
次へ 先頭へ