妄想小説
罠に嵌るチア女子 蘭子
二十六
「ねえ、蘭子。明日の東高との合同予餞会だけど、あれ本当になるの?」
「あれって、トータッチバスケットトスの事? 勿論、やるわよ。」
予餞会というのは、毎年秋に運動部の最終学年の選手が出場する最後の試合が終わった後、部を卒業する選手たちを送る為に開催されるブラスバンド部、合唱部、チア部などによる激励演技会のことである。東高と西高とでは毎年予餞会の時期になると互いの全校生徒が一つの体育館に集められて二高合同で開かれることになっていて、今年は西高が東高を招待して行うことになっている。蘭子たち西高のチア部はその予餞会で最終学年の精鋭メンバーが最後の演技を披露することになっている。トータッチバスケットトスはチアダンス競技会などでも演技される難度の高い技で、西高チア部でも蘭子一人しか出来ない技だ。
「折角チアダンス競技会に向けて練習してきたんだもの。競技会には技の数が足りなくてエントリー出来なかったけれど、あれはもう予餞会でしか披露出来ないから。」
蘭子が得意にしているトータッチバスケットトスは、5人が組になって行う演目のひとつで、蘭子以外の四人が蘭子の身体を空中高く投げあげ、蘭子が宙で大きく脚を広げながら一回転するという大技なのだ。
「よくあんなの出来るわね、蘭子。だって空中でスコートの中が丸見えになっちゃうのよ。私は絶対に出来ない。」
そういうのはアンスコだけでも見られるのが恥ずかしくてしょうがない麗子だった。
「まあ、麗子の場合、アンスコを見られるかどうかよりもまず跳んで宙返りそのものが出来ないんからか要らぬ心配ね。」
「でも、あれって迫力あるからみんな度胆をぬくでしょうね。蘭子だから出来ることよ。」
「最後にどうしてもあれを皆んなの前で成功させたいの。頼むね、みんな。」
その頃、東高のチア部部室ではあと一歩のところで蘭子の無様な姿を写真に収められる筈だった虹子たちがどうやって西高チア部に仕返ししようかと目論みをしている最中だった。
「好男のやつ、勃起してると小便が出せないなんて計算外だったわね。知ってた、沙季?」
「知らないわよ、そんな事。でもビンビンに硬くなってると尿道孔が縮まっちゃうのかもね。その分、ザーメンは勢いよく飛ぶらしいけどね。」
「いっそのこと、ザーメンを蘭子の口に流し込んじゃえばよかったんじゃない?」
「駄目よ、それじゃ。他のメンバーと一緒の刑になっちゃう。部長は部長なりにもっときつい懲らしめじゃないとね。なんかいい方法がないかしらね。あの蘭子にもう世間に顔向け出来なくさせるような赤っ恥を掻かせる方法は。」
「だってもう明日の予餞会で蘭子たちチア部も活動が終りでしょ。」
「待って。そうだわ。予餞会があったわね。ねえ、沙季。ちょっと耳を貸して。」
「え、何・・・?」
虹子は沙季に今思いついたばかりの策略をこっそり伝授するのだった。
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