玲子出頭

悪夢の前夜祭


 第一部



 六

 「あれっ? 貴方たちは・・・。」
 「あらっ、貴方。もしかしてテニス部キャプテンの早乙女玲子さん?」
 「ええ。生徒会長の水野美保さんに言われて来たんですけど。貴方たち・・・。」
 「そうよ。私達、東高の生徒よ。西高の文化祭に水野さんに頼まれて手伝いに来てるの。」
 「水野さんは?」
 「ああ、体育館で撮影の準備中よ。貴方、テニスの試合のコスチュームで来るように言われなかった?」
 「ああ、ええ。コスチュームは持ってきているわ。撮影って・・・?」
 「運動部の宣伝をするって水野さんが言ってたでしょ。その為のポスターの写真を撮るらしいわよ。」
 「ああ、それで試合用の恰好で来いって言ってたのね。じゃ、部室で着替えて来るわ。」
 「じゃ、私達も一緒に行くわ。着替えたら撮影現場まで案内するように言われているの。」
 「え、そうなの。分かった。」
 何も怪しまない玲子は二人を伴って教室のある校舎の裏手にある運動部の部室に先に立って歩いていく。
 「じゃ、すぐに着替えるからここで待ってて。」
 そう言って、東高の女子二人を外に残して一人で部室に入っていく。残された二人は目で合図をしている。

 「あ、もうすぐ着替え終わるからちょっと待ってて。」
 外で待っていると言ってた二人が部室まで入ってきた気配に、玲子は振り向くこともなく、最後にテニスシューズの紐を結びながら声を掛ける。
 「ねえ、アンスコも着けた?」
 「え、アンスコ? ええ、一応穿いておいたけど、まさかスコートの中まで写っちゃうような写真を撮る訳じゃないんでしょ?」
 「ああ、でも。ラケットを振る仕草位は撮るかもしれないから、念の為よ。」
 「そうなの・・・。
 「じゃ、これでいいかしら?」

教室直近廊下

 「ばっちりよ。あ、ラケットも持ってってね。ラケットケースもあったほうがいいわ。」
 「わかった。えーっと、ケースは・・・と。」
 東高の女子に言われてケースを探してロッカーの方に向いて背を向けた瞬間に朱美がもう一人の悦子に目配せで合図する。悦子がすうっと音を立てないように玲子の背後に近づいていく。

高野恭子顔

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