悪夢の前夜祭
第一部
四
「テニス部の早乙女部長を呼び出したりして、どうしようって言うの? 彼女は運動部だから文化祭には関係ないわ。」
「そうよ。文化祭は殆どが文化部がメインの催し物よね。だからこの際、運動部の連中にも文化祭を盛り上げる手伝いをさせようってわけ。」
「運動部に文化祭を盛り上げる手伝いをさせる・・・? 言ってる意味が分からないわ。」
「今のアンタには分からなくてもいいの。いいからつべこべ言わずにこの台詞をきちんと読んでそのまま伝えればいいのよ。」
「で、でも・・・。」
「あ、繋がったわ。さ、出るのよ。」
美保を縛ったまま、口元にスマホの通話口を顔の前に突き出した東高の女子高生等は無理やり美保に紙に記した台詞を読み上げさせるのだった。
「あ、あの・・・。わたし・・・。生徒会長の水野です。ごめんなさいね、こんな遅くになってからで。・・・。」
一旦、話を止めて目の前の東高の女子高生等を見上げる。しかし二人は美保に縛られて焼き鏝を当てられようとしている松下先生の画像を再び見せた上で、話を続けるように顎で合図するのだった。美保は逆らえないことを悟る。
「あのね、早乙女さん。急なんだけど、今回は運動部の人達にも文化祭を盛り上げる手伝いをして欲しいの。・・・。あ、それは説明するから学校に来て欲しいの。・・・。そう、今からよ。・・・・。あ、その時にテニス部の試合用のコスチュームで来て欲しいの。・・・。そう、あのコスチューム。だって、文化祭に来てくれた人達に運動部の事も宣伝して、新たに部活に参加してくれるように働きかけたいの。・・・・。そう、新たな部員を増やす絶好のチャンスでしょ? 協力してくれるわね。・・・・。あ、ありがとう。じゃ、生徒会室で待ってる。あ、あの・・・。」
もう一言付け加えようとしたところで美保の口元に差し出されていたスマホはさっと取り上げられると勝手に通話を切られてしまう。
「いいこと。余計なことを言うんじゃないわよ。一回、松下先生に悲鳴を挙げさせてみる? 」
「や、やめてっ。そんな事。わ、わかりました。余計なことは決して言いませんから。先生に酷い事はしないでっ。」
「ふん。分かったようね。そしたら次は女子水泳部の部長ね。えーっと、高野恭子って子かしらね。あ、あったわ。これね。さ、掛けるわよ。」
再び呼び出し音が止まって通話が繋がったところでスマホが縛られている美保の口元に差し出される。
「あ、水泳部の高野さん? 生徒会長の水野です。」
高野恭子はバタフライの高校生記録も持つ男勝りのボーイッュな性格だが、多くの男子生徒に憧れられている人気女子の一人だった。美保は高野恭子にも競技会で着る試合用のスイムウェアを持ってくるように頼むのだった。
それからは次々に女子弓道部キャプテンの真行寺麗華、チアリーティング部のキャプテン、浦部貴久子などが呼び出されていく。それだけではなく、呼び出しは水泳部顧問の宮崎久美子、女子テニス部顧問の如月美月の二人の女教師までに及び、生徒会顧問、松下菜々子からの依頼だと偽って誘き出されることになったのだった。
「貴方たち、運動部のキャプテンばかり呼び出していったい何をしようと言うの。しかも顧問の先生まで・・・。」
「それはおいおい分かることよ。さて、皆が来てしまうとこっちはいろいろ準備があるので忙しくなるから、アンタにはその間おとなしく待ってて貰わなくちゃね。そうね、ここに吊るさせて貰おうかしらね。」
女達は美保を縛った縄の余りを天井近くに付いているフックに引っ掛けると縄を引いて美保を吊り下げる。
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