東高男子

悪夢の前夜祭


 第一部



 十九

 朱美はあらかじめラインで伝えた開催予定時刻まで一分を切ったのを確認してからゆっくり合図をして悦子にマイクのスイッチをオンにさせる。
 「えー、長らくお待たせしました。いよいよ西高精鋭運動部キャプテン等による西高文化祭の前夜祭を開始致します。予定されているエントリーの方々はそれぞれの目的地へ向かって速やかに移動願います。目標となる生贄は既に準備が整っております。あらかじめお伝えしている順番を守って、お互い諍いなく事を為されるようお願いいたします。尚、終了のアナウンスがされました場合は、未遂、既遂にかかわらず速やかにキャンパスからの撤収をお願い申し上げます。」
 予定されていた文章をスラスラっと読み終えると悦子に合図してマイクのスイッチをオフさせる。

 その放送が為されるのを西高の門の外でずっと待ちわびていた東高の男子生徒達は、それまでずっと半信半疑だったのが現実のことであるのを知って我を忘れて西高キャンパスに雪崩こんだのだった。それぞれにお目当ては異なっている。西高一番の人気の女子テニス部キャプテンの早乙女玲子がお目当ての男子たちはキャンパス奥のテニスコートへ、水泳部キャプテンの高野恭子がお目当ての男子はグランド脇のプールサイドへ、弓道部主将の真行寺麗華お目当ての者たちは弓道場へ、チアリーディング部部長の浦部貴久子目当ての男子たちは体育部部室棟のある校舎裏手へ一目散に駆け出したのだった。

 東高男子たちは事前に東高の裏アカウントのラインで呼び集められていた。
<貴方もこの夏の一大イベント、西高文化祭の前夜祭で童貞を卒業しませんか。西高きっての美人アスリートが処女を捧げて貴方の参加をお待ちしています。エントリー予定は以下の女子キャプテン達です。お好みの女子を選んで登録ください。一番最初に処女を奪えるのは当選したお一人様のみとなりますが、全員もれなく童貞を卒業することが出来ます。奮ってご応募ください。>
 そんな謳い文句の募集が裏アカウントのラインで流されたのだ。皆、ただの冗談、悪ふざけだと思ってみていたのだが、もしかしたらとこっそりとエントリーした者も少なくなかった。好みの女子を選んでエントリーした男たちには密かに凌辱の順番が返信されてきていたのだった。

 集合時間と凌辱順位が示された後に次のような注意事項が書き記されていた。
<参加の各位には以下のことを厳守頂きます。
・秘密を守る為、当日までイベント参加等については誰にも他言しない事。
・性交の失敗を避ける為、当日前の数日間はオナニーを控えること。
・凌辱の際はスマホに示される順位を他の参加者に示して順番を厳守すること。
・行為は射精一回までとします。射精後は速やかに次の人と交代してください。
・当日は生贄となる獲物にスポットライトが当てられています。常に明かりに対して逆光になるようにし、明かりの側には自分の顔を絶対に向けないこと。行為の最中は声を発しないこと。違反すると後日、強姦罪で訴追される可能性があります。
・キスは顔を覚えられる可能性があるので禁止とします。強制フェラや口内への射精は可能ですが咬みつかれるリスクは自己責任とします。
・優先順位5番目終了以降はフリータイムとし終了の合図があるまでは何度でも再性交を許可します。ただし順番は争わず譲り合いを遵守ください。
・持ち帰りは出来ません。
・終了のアナウンスがあった後は証拠を残さぬようにして速やかに撤収いただきます。>

 かなり細かい注意事項が列挙されていてリアル感を演出しており、もしかしたらこれはフェイクではなく本当なのではと男子たちに密かに思わせていたのだ。それでも闇の中にそれぞれが思い描いていたお目当ての相手が拘束されて自分達の闖入を待ち受けているのを実際に見るまでは、半信半疑の思いは消えなかった。
 当初から一番人気と思われていた女子テニス部キャプテンの早乙女玲子を目当てに、スマホで指示されたテニスコートへ向かったのは十名ほどの男たちだった。そのうち、五人までは予約の順番が決まっているが、それ以外は予約の者が終わってフリータイムになるまで待たなければならないのだ。それでも早乙女玲子を相手に童貞を捨てられるのならば、何番目であろうとも待つ覚悟が出来ていた。五番目以降の順番は既にジャンケンでお互いに決めあっていた。

高野恭子顔

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