悪夢の前夜祭
第一部
二
文化祭の最終計画書をチェックしていた西高生徒会長の水野美保は人の気配で顔を上げると、突然生徒会室に入ってきたセーラー服の二人組に驚いていた。その制服は美保もよく知っている隣の高校、東雲商業高校のものだとすぐに気づいたからだ。
「貴方たち・・・、東高の生徒さんですよね。いったい、どうして?」
「ふふふ。生徒会長の水野美保さんね。明日、西高の文化祭なんでしょ。私たち、西高の文化祭を盛り上げるお手伝いをしに来たの。」
「文化祭を盛り上げる手伝い・・・? いったいどういうことかしら。」
「普通の文化祭をやってもマンネリで盛り上がらないでしょ? だから前夜祭を大々的にやって盛り上げるの。」
「前夜祭ですって? そんなの、計画にはないわ。」
「私たちが計画してあげたの。東高の男子生徒たちにも西高がよく分かって貰えるようにってね。さ、準備始めるから手を後ろに回してっ。」
美保は女たちが背後に隠し持っていた縄の束を出したのを見て狼狽える。
「な、何・・・。縄なんか出して。ま、まさか・・・。」
「そうよ。察しがいいわね。これで縛ってあげるのよ、アンタを。さ、おとなしく手を後ろに回しなさい。」
そう言うと、無理やり美保の手首を掴むと背中の方に捩じり上げる。
「や、やめてっ・・・。」
女たちは縄の扱いに慣れているらしく、一人が美保の腕を捩じり上げて自由を奪うと、もう一人が片方ずつ手首に縄を巻き付けあっという間に美保を後ろ手に縛りあげる。
「いや、やめてっ。放して頂戴。どうして私が縛られなくてはならないの。これっ、解いてっ。」
「駄目だね。お前にはこれからやって貰わなくちゃならない大事な仕事があるんだからね。それが終わるまでは自由にはしてやれないのよ。」
「わ、わたしに何をさせようっていうの。貴方たちの言うことなんか、聞くつもりはないわ。」
「あら、それはどうかしらね。アンタは私たちの言うことを聞くしかないのよ。私たちには逆らえないの。」
「ど、どういう事・・・?」
「貴方の大好きな顧問の菜々子先生。菜々子先生を慕ってるでしょ。大事な菜々子先生が酷い目にあってもいいの?」
「な、何を言ってるの。貴方たち・・・。」
「ほらっ、これ。ご覧なさいな。」
女たちは両手を縛られた美保の眼前にスマホの画面を翳して見せる。
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