悪夢の前夜祭
第一部
二十八
東高の男子生徒等が全て居なくなったところを見計らって朱美と悦子は凌辱現場を廻ってゆく。襲われたキャプテン達は皆、憔悴してぐったりと倒れ込んでいる。凌辱の一部始終を録画したビデオカメラを回収し、生贄となったキャプテン達に目隠しのアイマスクを着けさせてから縛った縄を自力で何とか解ける程度に緩めておく。テニス部の早乙女玲子、水泳部の高野恭子、弓道部の真行寺麗華、チアリーディング部の浦部貴久子と廻ってゆき、最後に生徒会長室の水野美保の元へ行く。
二人が生徒会室に入って来るのをみとめた美保だったが、もはや二人を睨みつけるような気力も残っておらず虚ろな目で呆然としているだけだった。相変わらず天井から降りて来る縄に吊られてお洩らしをした足元の小水もまだ乾ききっていなかった。朱美が近づいていってブラウスの裾を持ち上げると、内腿には男子たちの精液の痕と共に鮮血の流れた痕がこびりついている。
「あら、アンタ本当に処女だったようね。処女で童貞を卒業した男子もさぞかし歓んでいたでしょ?」
嘲るように言う朱美に言葉を返す元気もない美保だった。
「自分で解けるくらいに縄は緩めてやるから自力で解くのよ。」
「あの・・・。先生たちは?」
美保は朱美等に言われて三人の顧問の先生を呼び出したことを覚えている。朱美等にスマホの動画で様子を見せられたのは、生徒会顧問の松下菜々子だけだったが、他の二人の顧問教師も同じ目に遭ったに違いなかった。
「あら、自分の心配より顧問の先生の方が大事? そうね。アンタが呼ぼ出したせいであんな目に遭ったんだからね。」
朱美のその言葉に今更ながらに責任を感じる美保は、同じように自分が呼び出した運動部のキャプテンたちの事を思い出す。
「他のキャプテン達は?」
「皆んなお務めを終えて自力で脱出してる頃よ。先生たちにはもう一度気絶して貰うから、目覚めて起きて来る前に居なくなることね。」
美保の後ろ手の縄を少しだけ緩めるとそのまま出て行ってしまう二人だった。
体育館の用具倉庫室に監禁しておいた生徒会顧問の菜々子先生の前に二人がやってくると、まだガムテープで口も封じられていたままで床に縛られて転がされていたが、二人に抗議しようとする呻き声を上げる。
「あら、先生ったら。女の子たちとは違って元気がまだあるわね。様子はしっかり目撃したわね、このスマホで。」
菜々子先生に見せていたスマホを回収する。映っていた水野美保はまだ縄が解けないらしくもがいている最中だった。それを確認すると動画を止める。
「先生。貴方には申し訳ないけどもう一度気絶して貰うわね。」
そう言うと、縛られて何も抵抗が出来ない菜々子に向けてスタンガンを翳す。
「ううっ、うう、うう・・・。」
再びスタンガンを浴びせられると知って身体をゆすって抗議の声を出そうとするがガムテープに塞がれて声にはならない。
バチバチバチバチッ。
必死の抗議も虚しく、崩れ落ちた松下菜々子の後ろ手の縄を解くと次のテニス部顧問、如月美月、水泳部顧問の宮崎久美子の方へ向かう二人だった。
水泳部顧問の教師、宮崎久美子が目を覚ましたのはもう明け方近くになってからだった。最初、自分が何処に居るのか、どうしてそこに居るのかも思い出せなかった。しかし自分が服を着ておらずブラジャーとショーツだけの下着姿であるのを見て、だんだん記憶が蘇ってきた。
(そうだ。縛られて天井から吊るされていたんだわ。そしてスタンガンを浴びてその後、きっと気を喪ったのだろう。)
手首を見ると、既に縄は無くなっているが手首には縛られていたらしい赤い痣のような痕が残っていた。
辺りを見回して女子更衣室の隅に丸めて放り出されている自分の服を取り戻す。
(そうだ。高野恭子さん・・・。)
久美子は縛られている間に見せられていたスマホの動画の画面を思い出した。そこには後ろ手に縛られ脚はデッキブラシに繋がれて開かされていた水泳部キャプテンの恭子が男たちに無残にも凌辱されていく姿が映し出されていたのだった。服を身に着けると慌ててプールサイドに出る。女子更衣室から反対側にあたるプール際のコンクリの上にうっすらと沁みのようなものが残っているのが見えるが恭子も他の男たちも全く姿は見えなかった。ただデッキブラシが一本、コンクリの沁みの傍に放置されているのが発見されただけだったのだ。
宮崎にはスマホの動画で高野恭子の姿を見せられただけなので、他に何処でどんな凌辱劇が起こったのかは知らされてなかったのだが、時折聞こえてきた校内放送の様子からは凌辱されたのは高野恭子だけではなかったらしいことは容易に想像出来たのだった。
体育館の用具倉庫室で目を覚ました生徒会顧問の松下菜々子も同様だった。生徒会会長の水野美保のことを思い出して、落ちていた自分のスカートを纏うと急いで生徒会室へ向かったのだが、既にそこももぬけの殻だった。そこに美保が居たらしい痕跡は床に微かに残っている濡れた沁みの痕だけなのだった。
第一部 完
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