妄想小説
恥辱秘書
第十七章 仕組まれた罠
二
次の行為は、裕美のほうからの行動だった。執務室の長谷部にインターホンで電話を掛ける。
「専務。吉村執行役員が、昨年の業務監査の時の是正通達の書類を貸してほしいと連絡してきているのですが。」
「あ、そう。僕のところにあったっけ。」
「確か保管されていると思います。宜しければ、わたくしのほうで捜しますので。」
「あ、そう。じゃ、頼むよ。部屋に居るから。」
吉村執行役の欲しい書類というのは、勿論、芳賀がでっちあげた嘘である。長谷部の部屋に入り込んで痴態を演じる為の口実なのである。
裕美は小さな脚立を持って、長谷部の部屋へ入る。長谷部の執務机から見て、左側の壁は一面の書棚になっていて、最上段は天井まで届いている。脚立でなければ背が届かない。
「それでは、失礼します。」
裕美はその書棚の前に脚立を置くと、ハイヒールを脱いで、脚立に危なっかしげな足取りで上がってゆく。それでなくても短い裕美の制服の裾が、机の前に座った長谷部の目線より高い位置になる。裕美は書棚に向かって長谷部には背を向けているが、痛いように長谷部がちらちらと自分のほうを覗いているのを感じる。
電子メールの指示には、「最上段を探すように脚立を昇り、そのまま段を降りないで身を折って下の段を捜す振りをすること」と書いてあった。身を屈めることで、さらにスカートの裾をずりあげさせる為である。裕美のぴんと張った長い脚が長谷部のすぐそばに露わに晒される。
脚立の上に乗っかったまま、重いファイルを開いてページを繰り、書類を捜している振りをしている。架空の書類の為、裕美も必死でそれらしく演技する。その演技につい夢中になって、長谷部がすぐ下に来ていることに気づかなかった。
長谷部は脚立のすぐ下の裕美の真後ろまで来ていた。眼の前に裕美のスカートの裾がある。少し身を屈めるか、もう少し裕美が背伸びをしさえすれば、下穿きが覗いて見える位置にある。
裕美は突然我に返って、背後に気配を感じて振り返り、長谷部がすぐ真下に居るのに気づいて慌てて、バランスを崩しそうになる。
「あら、きゃあ~。」
倒れそうになる裕美の太腿を長谷部の両腕ががっしりと捉えた。
「大丈夫か、君。」
裕美の生脚をしっかり掴んだ長谷部の掌は汗でじとっとしていた。裕美は倒れこまないように脚立の鉄枠にしがみつくのがやっとだった。
「す、済みません。専務。」
裕美はおそるおそる脚立を降り始める。手には分厚いファイルを持っているので、片手で脚立の枠を掴んで両手の自由は効かない。降り始めた裕美の動作に、長谷部は手を離さざるを得ないが、名残おしそうにして、離す一瞬手が引っ掛かったように裕美のスカートの中に手を入れる。スカートがちらっとめくりあがって、白いレースのパンティが一瞬露わになり、その端に長谷部の手が瞬間だけ触れた。
裕美は気がつかなかった振りをした。
「申し訳ありませんでした、専務。ファイルはありましたので、お貸し頂いて、秘書室で必要部分だけコピーして参ります。」
「そうかね。じゃあ、そうして。」
「あっ、そうそう。専務。あのシャンデリアのランプが幾つか切れているのではありませんか。この前から気になっていたのですが、総務部から替えの電球が届いていましたのでお取替えいたしましょうか。今が宜しければ、今すぐに私がやりますが。」
明らかに狼狽していることが判る長谷部のうろたえ振りに裕美は畳み掛けるように次の指示の行動を仕掛ける。
「あ、ああ。そうしてくれるかね。君で出来るのかね。」
「大丈夫です。今すぐに持って参ります。」
次へ 先頭へ