深夜の校内巡り

悪夢の前夜祭


 第二部



 四十九

 朱美が悦子の耳元にある事を囁くと、悦子は頷いて先に立ってゆく。
 「さ、トイレを使わせてあげるからついてきなさい。」
 しかし久美子が連れてこられたのはトイレではなかった。
 廊下の真ん中に置かれていたのは、見覚えのあるゴミ箱なのだった。その向こうで悦子がビデオカメラを構えているのだ。
 「こ、これは・・・、もしかして。」
 久美子がおそるおそるゴミ箱の中を覗き込むと、自分の着てきた服が奥に突っ込まれている。一番上に乗っかっているのは最後に脱いだブラジャーとパンティだった。
 「ここにするんですか? これはわたしの・・・。」
 「つべこべ言わずにそれを跨ぐのよ。出来なければずっとそこで我慢してなさい。」
 「ああ、そんな・・・。さっきから猛烈にオシッコがしたくなって堪らないのです。もう我慢が出来ません。」

ゴミ箱放尿撮影

 久美子はあまりの強烈な尿意に催眠術にでもかかったように、差し出されたゴミ箱を跨いでしまう。
 (ああ、駄目。こんな事しては・・・。)
 そう思うながら強烈な尿意から解放されたい欲望に耐え切れない。一旦、最初の滴がポタリとゴミ箱の中に落ちていくと、もう堰を切ったように迸り出る小水をもはや止めることは出来なくなってしまう。見る見る間に真っ白だったショーツとブラが薄黄色に染まっていく。
 (ああ、そんな・・・。)
 勢いが弱くなってくると真っ直ぐに奔流が流れ落ちていたものが太腿の内側を伝わり始める。それが久美子には情けなかった。
 「随分溜まっていたのね。あ~あ、こんなに汚しちゃって。先生、何着て帰るつもり?」
 嘲笑うかのように朱美が久美子の耳元で囁く。それに対して久美子は悔しさと恥ずかしさに顔を上げることも出来ずにただ俯いて視線を合わせないようにするだけだった。
 「さ、今夜はここまでにしておいてあげるわ。ただ、これで禊が済んだ訳じゃないのよ。先生の我が子を救いたい気持ちの本気度が確かめられるまではね。明日の日曜日も学校は人が居ない筈だから午後2時に来るのよ。先生が本当に従順になれたかどうか確かめてあげるから。」
 そう言うと久美子の背後に廻って両手を縛っている縄を少しだけ緩めると、悦子を伴ってその場を去ってしまうのだった。
 後に残された久美子はもうどうしていいのか分からずに暫くゴミ箱を跨いだまま呆然と立ち尽くしていた。やがてはっと我に返って少しだけ緩められた両手首の縄をなんとか自力で解くと、濡れそぼった下着と服をゴミ箱の中から拾い上げる。じとっと濡れて持つのも気持ち悪かったが、置いていく訳にもゆかなかった。廊下からプールへ向かう渡り廊下の途中にある手洗い場で一番小水を吸っているショーツとブラだけを水で洗い流す。しっかりと手で絞ってみたが、とても身に着けられる感じではなかった。それ以外の服は洗えば暫くは着れなくなってしまうので、あちこち沁みになってじとっとしている部分があるが、ノーパン、ノーブラのまま身に着けることにする。
 幸い外は明りが少ないので闇に紛れて小便臭い服を着たまま逃げるように東高を後にするのだった。持っていった高野恭子が映っているらしいDVDの入ったパッケージを置いてきてしまったのに気づいたのはもう自分のアパートが目の前に迫ってきてからだった。心がすっかり折れてもう取りに戻る気にもなれなかったのだ。

高野恭子顔

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