悪夢の前夜祭
第二部
四十七
「どうかお願いします。あのビデオは流出させないでください。」
「先生。それで充分謝っているつもり? 自分のしたことの償いが出来たとでも思っているの?」
「いえ、そんなつもりはありません。あの子が受けた苦しみの一部も私は背負うことが出来ませんでした。」
「そう。じゃ、あの子の受けた屈辱の一部だけでも味わってみるがいいわ。さ、これを飲み干すのよ。」
「え、こ、これは・・・。」
「大丈夫よ。毒じゃないわ。あの子も呑んだものよ。いいから、さ、吞みなさい。」
きつく厳しく追及されればされるほど、教え子の恭子が凌辱された責任が自分にあったかのように錯覚してしまう久美子だったが、そんな風に誘導されているのだとは自分では気づいていないのだった。
「うっぷ。ぐふっ・・・。の、呑みました。」
「そう。じゃ立つのよ。」
「は、はいっ。」
朱美が目で悦子に合図すると、悦子はビデオカメラを久美子の背後で用意する。
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